怪しい投資話 1
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「例の行商人がまた来た?」
王妃様のお茶会から帰宅したわたしは、エッケハルトがにこにこ顔で投資の契約書を差し出してきて、目を丸くした。
「うん、そうなんだ。父様が断ろうとしてたから、僕がちゃんと契約書を手に入れておいたよ。見るからに怪しいでしょ~?」
「エッケハルトはその投資話に興味があったんじゃなかったのかい?」
お父様がきょとんとすると、エッケハルトがあきれ顔でお父様を見やる。
「ある意味興味はあるけど、投資をする気なんてさらさらないよ。父様、うまい話には裏があるものなんだから、ちょっとは疑わないとダメだよ~?」
「あら、じゃあどうしてその契約書を預かったりしたの?」
お母様がおっとりと頬に手を当てる。
エッケハルトはにまにまと得意げに笑った。
「姉様の上司のフリードリヒ様が最近王都で広まっている投資の話について探っているんでしょ? これ、役に立つんじゃないかと思って」
「エッケハルト、偉いわ!」
わたしは得意げなエッケハルトの頭をぐりぐりと撫でた。
どうしよう、うちの弟、神童というやつではなかろうか! 十歳なのにお父様の何倍も賢い気がする!
「えへへ~」
褒められたエッケハルトが嬉しそうな顔でわたしの腰に抱き着いてくる。
ぎゅーっと抱きしめ返してから、わたしはエッケハルトが渡してくれた投資の契約書に目を通した。
ざっと目を通してみると、確かに怪しい。
あまりに利益配分が高すぎるのだ。
……売り上げの九割を投資者に分配しますって、あり得ないでしょ。
そう思って隅々まで契約書を確認していくと、隅の方に小さく、損失が出た場合は、売り上げと同じくその九割を投資者の投資金で相殺すると書いてあった。
「エッケハルト、この契約書、わたしが預かってもいいのよね?」
「もちろんだよ~」
フリードリヒ様とマクシム様が怪しんでいたことから、お父様が借金を背負うことになった投資話には何か裏があるのではないかとは思っていたが、これはいよいよ怪しくなってきた。
お父様に投資話を持って来たホルガーという行商人は、もしかしたら詐欺師ではなかろうか。
……もしそうだとしたら、二度もお父様を騙そうとするなんて、許せない‼
お父様はもう投資はしないと心に決めていたようだが、あの手の人間は、断ったところであの手この手で騙そうとしてくるものだ。エッケハルトが機転を利かせてくれて助かった。
……もしその男が詐欺師なら、捕まえてとっちめてやるわ‼
まずは、フリードリヒ様に報告だ。
フリードリヒ様とマクシム様が投資話を探っているのであれば、何らかの情報は持っているはずだからである。
わたしは、契約書を握り締めて、急いで第一聖魔法騎士団の棟へ戻ったのだった。
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