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ちょっと留守にしていたら家が没落していました  作者: 狭山ひびき


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長期休暇と工場視察 2

お気に入り登録、評価などありがとうございます!

 うふふふふふふ!

 笑いが止まりません‼


 留学から帰って三か月。

 そして、聖魔法騎士団に入団して二か月。

 我が家の稼ぎの合計が、金貨七百枚に到達いたしました‼


 ……恐れ多くて怖いと思ったけど、「国王陛下御用達」の七文字効果、すごすぎる‼


 我がハインツェル伯爵家が開発し、伯父様に売ってもらっている商品は現在四種類。

 猫の手、湿布薬、ハンドクリーム、バスボムである。

 これらすべてに「国王陛下御用達」の七文字が付けられ、現在在庫が追いつかない勢いで飛ぶように売れているそうだ。


 伯父様もウハウハで、本気で伯父様のところの次男とわたしを婚約させようとしているくらいだった。もちろん、丁重にお断りしたけどね!

 これだけ売れていると、さすがに父一人で作るのは追いつかないため、伯父様が我が家の製品専用の小さな工場を作ってくれることになった。

 工場の運営も全部伯父が面倒を見てくれて、我が家には商品が売れるごとに権利収入が入って来るという寸法だ。

 ちなみに稼いだお金は、銀行の貸金庫に入れるようにしていた。


 ……だって、この家、セキュリティーガバガバだからね~。


 この勢いで二次関数的に放物線を描いてくれたら、借金返済まであっという間よ‼


「マルガレーテ~、パパ、最近作るものがなくて退屈だよ~」


 聖魔法を使って作る湿布薬以外の三製品が工場製造に切り替わったため、お父様が作るものがなくなった。

 夏になって裏庭の畑の実りも順調だが、畑仕事はすっかりエッケハルトの仕事になってしまったため、お父様は手出しさせてもらえないらしい。


 ……うーん。そうねえ?


 お父様もずっと頑張っていたし、次に作るものを思いつくまでゆっくりすればいいと思うのだが、領地経営をしていたときと違って今はすることがないため、何かを作っていたいという。

 元手があんまりかからずに、簡単に作れて売れそうなもの、他に何があるかしら?

 前世の世界にあって今の世界にないものはたくさんあるけれど、あると便利だと思うものの中で簡単に作れそうなものが思いつかない。


 ……マッチもな~。作ろうと思えば作れるんだろうけど、お父様のうっかりで火薬に引火して家が火事になったら嫌だし。


 この世界では火打石を使うか、もしくは魔術で火をつけるかどちらかなので、マッチというものは存在しない。

 聖魔術と違い魔術は簡単なものなら平民でも半数が使えるので、マッチを作っても需要はあまりない気もするし。


「ぱっと思いつかないから、保留で」


 個人的には折りたたみ傘とかあれば嬉しいなと思うけど、折りたたみ傘の構造はよくわからないし、わかっても作るのがとても大変そうなので割に合わない。

 お父様がしょんぼりしているので、わたしはちょっと考えた。


「明日から、わたし長期休暇なの。一週間のお休みがもらえてね。伯父様が作ってくれた工場見学に行こうと思っていたんだけど、お父様、一緒に行く?」


 前世で言うところの夏休みのようなものだ。聖魔法騎士が全員一気に休むと大変なので、各団ごとに日が決められていて、第一聖魔法騎士団は明日から一週間の予定だった。


「もちろん行くよ!」

「え、父様だけずるい! 僕も行く!」

「ママも行くわ~!」


 わたしとお父様の会話を聞いていたエッケハルトと母まで会話に入って来た。どうやら全員で工場見学に向かうことになりそうだ。


「あ、姉様、工場に行くなら姉様が作ったあの冷たいお菓子、お土産に持って行ってあげたら?」

「あら、いいわね!」


 わたしが作った冷たいお菓子というのは、ジュースを凍らせたアイスキャンディーのことだ。

 細い竹で作った容器にジュースを入れて細い棒状にした竹を刺し、魔法で凍らせたものなのだが、これが家族には大好評だった。

 この世界に氷はあるがアイスキャンディーやアイスクリームはないので、珍しかったようである。

 氷結の魔法が使えないと作れないが、お父様は聖魔法は使えないが魔法は得意なので、このくらいのことは造作もない。わたしもお父様ほどではないが魔法も使えるので、作ろうと思えば作れる。


 ……うん?


 ふと、わたしはここで閃いた。


 ……もしかして、アイスキャンディー、売れるんじゃない?


 アイスクリームのように舌触りを滑らかにするために時間をかける必要もないので作るのは簡単だし、家族に好評ということは老若男女問わずに人気が出るのは間違いない。

 前世では美味しいアイスクリームがたくさんあったので、アイスキャンディーはあんまり食べなかったのだが、この世界にはアイスクリームがないのだから需要はそれなりにあるはずだ。

 しかも、今は夏! 毎日猛暑日である!


 ……これは売れる‼


 問題は、アイスキャンディーは溶けるので、保存する冷凍庫が必要と言うことだ。


 ……冷凍庫、作れるかな?


 冷凍庫は大量には必要ない。伯父様の店でアイスキャンディーを保存さえできればそれでいいのだ。


「ねえお父様、ちょっと訊きたいんだけど、氷室の魔道具の応用で例えば氷が解けないくらいの低い温度を保てる魔道具って作れる? 中の温度を氷の融点以下にする必要があるから、氷室の魔道具よりももっと冷たい温度にする必要があるんだけど……」


 この世界にも冷蔵庫の簡易版ならある。氷室の魔道具と呼ばれる箱状のもので、傷みやすい食材を保存するのに使うのだ。

 ただし、電気が通っていないため、氷室の魔道具の動力源は魔石と呼ばれる魔力を込めることができる石だ。その魔石には定期的に魔力を込めておかないと、魔力切れを起こすと氷室の魔道具も動作を停止するのが難点なのだが、魔法が使えない人のために、魔石に魔力を充填する、充電屋さんのような職業の人がいる。世界が変われば面白い仕事があるものだ。


「作って作れないこともないけど、そんなもの、どうするんだい?」

「それがあればアイスキャンディーが保存できるでしょ? 伯父様のお店で売れないかなって思って。お父様も暇そうだし、アイスキャンディーを入れる竹の容器を作ってくれたら助かるんだけどな~」

「なるほど、それはいいね!」


 暇を持て余していたお父様はすぐさま飛びついた。

 のほほんとしている割になかなか優秀な魔法使いであるお父様なら、きっとやってくれるはずだ。


「せっかくだし、明日までに試作品を作ってみよう。温度を変えるだけなら、少し大変だがやってやれないことはないはずだ」


 すでにお父様の中には冷凍庫の構想が出来上がっているようだ。頼もしい!


 ……ふっ! アイスキャンディーが売り出せれば、元手はジュースと砂糖と竹だけよ! 利益率は高いはず!


 いける、これはいけるわ、と思った後で、わたしはハッと思い出した。


 ……新商品を売り出すときは、私のところに持ってこいってフリードリヒ様が言っていたのよね。


 だが、今回はアイスキャンディーだ。

 フリードリヒ様とアイスキャンディー。


 うん、絵面が全然浮かんでこないわ。似合わない~。





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