雨に宿る
雨が止まない。私の上にだけ付き纏う雲が私を濡れ鼠にする。だけど、この呪いの解き方は私にしか分からないらしい。
これまで様々な呪い師と話してきたが、彼らは決まって最後に告げる。
「自分を変えれるのは自分だけ。私たちはきっかけにしかなれない」
他力本願な私にとって、その言葉は失望さえもたらした。ただ、実際に雨に打たれていると他人は一時的な傘にしかならないのを実感する。一人になった瞬間に、私は豪雨に襲われてきた。他人はいなくなってしまえば意味が無い。……所詮、雨宿りでしかなかった。
呪い師曰く、雨は、傷から延々と湧き出る涙。そして、雨を止ませる方法は自分だけが知っているらしい。
それでも、私は雨を止ませることが出来ない。
元凶だと思う傷のことを思うだけで、頭上の雲が雷を轟かせた。不穏さを覚えながら突き進めば、チクチクと雹が私を痛めつける。それでもくじけずに傷に触れようものなら、雷が落ちてきて意識を刈り取ろうとしてくる。
傷は……もしかしたら直接的に葬り去るものではないのかも知れないな。いつの間にか忘れ去っているのが理想なのかも知れない。
そのためにも私は雨宿りをしたかった。泣き濡れて、帰る場所もなく、低体温症に近づくと人間は感情を失う。そして、ふとした瞬間に湧き上がる強い感情に支配されては破壊衝動を覚えるのだ。
それは、雪山で全裸になる人のように。人間は最後が近づくと異常行動を取る。
その異常行動を何度も医療の力で乗り越えてきた私は、強く思う。薬がなければ保てない平穏なんてまやかしだ、と。
ただ、そのまやかしを使ってでも休まないと行けないのも事実で、歯がゆく思う私が居た。苦しい中、生き続けることに絶望している自分もいた。
そんな私は、ずっと守ってくれる偉大な傘を求め続ける。それは大樹のように温かくて、頼もしくて、落ち着く存在。勿論、簡単には見つからないけども、私はそんな傘が欲しい。
傘を渡り歩いていけば雨はしのげる、と稀に言われるけども、偉大な傘がなければ疲れだけが溜まるだけのように感じて。
そうやって自分の道を感性で捨てている内に救いはない。




