『プレスマンに化けた狐』
あるところに、じいさまとばあさまがあった。じいさまが毎日山へ行って柴刈りをして、町で売って、その日その日の暮らしを立てていた。ある日じいさまが、いつものように山へ行くと、村の子供らが三人で、一匹の狐を捕らえて折檻していた。じいさまはかわいそうに思って、生き物をそんなひどい目に遭わすもんでねえ、俺に売ってくれ、と言って、一人一人に銭を与えると、子供らは喜んで、狐をじいさまに売ってくれた。じいさまは狐を連れて山の奥に入り、昼間に村の近くに出ちゃなんねえ、と言い聞かせて放してやった。
次の日、じいさまが山へ行くと、きのうの狐が出てきて、お礼がしたい、という身振り手振りをしますので、そんなことは気にせんでええ、という身振り手振りをしますと、それでは気が済まない、という身振り手振りをしますので、しかし、何も欲しいものもないしなあ、と腕組みをしますと、お寺の和尚さんがプレスマンを欲しがっています、私がプレスマンに化けますので、和尚さんに見せに行ってください、と言わんばかりにしっぽを振りますので、じゃ、そうしようということになり、狐がくるっととんぼを切りますと、見事なプレスマンに化けましたので、じいさまが和尚さんに見せに行きますと、和尚さんは大層喜んで、プレスマンを三百文で買ってくれました。夜になると、狐は、狐に戻って、じいさまのところへ戻ってきました。その後も、原文帳に化けたり、紙をめくりやすくする軟膏のようなものに化けて、そのたびにじいさまををもうけさせたので、じいさまの暮らしはすっかりよくなりました。
教訓:正しい行いとは言えない。




