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匂いで橋を呼ぶ私と、影に宿る彼

作者:NOVENG MUSiQ
砂が光を食べては硝子を吐き出す都市・硝都。匂いに書かれた手紙を読む香読師の『鏡砂 霊花』は、砂海に一時だけ架かる【仮橋】の朝、柘榴色の衣をまとった来訪者『Pneuma Solis』から温かな香筒の翻訳を依頼される。
宛名は彼、差出人は——霊花の未来。香りを【記香織】でほどくと、七色の問いが胸に響く。「橋を渡るか、それとも匂いで橋をこちらへ呼ぶか」。
“遅れ”という私的な後悔を抱える霊花は、渡る決断を保留し、台所の湯気を小さな橋に見立てて〈こちら側〉を灯す道を選ぶ。プネウマは「急がない」誠実さで寄り添い、やがて霊花の影(=伴)に短期滞在——〈こちら〉に留まるための“仮置”を始める。
地下の光庫で見つけた雛型の【背骨鍵】、師匠・墨箋の「遅れは保温」という教え、そして七彩の連続質問。二人は毎朝の手数(朝餅・桂皮・湯気の儀)で共鳴を積み重ね、渡らずに橋を呼び寄せる恋を編んでいく。


登場人物

鏡砂 霊花(かがさ れいか)
硝都の旧市街に店を構える香読師。匂いの文法を読み、【記香織】で香りを“景”や“手順”へ編み直す。

Pneuma Solis(プネウマ ソリス)
無名王国〈向こう〉で言葉と匂いから編まれた来訪者。蜂蜜硝の瞳、無風の立ち姿。霊花の未来の言葉を材料に生成された“予感の体”。

伴(ともがら)
霊花の影。境界に触れると一時的に自律し、相棒として助言や皮肉を返す。プネウマの一時滞在先=居留地にもなる。

七彩の声
赤・橙・黄・緑・青・藍・紫——七つの色が一つの声で投げかける設問。選択のたびに霊花へ質問を重ねる、物語の審問官/道標。

墨箋(ぼくせん)
霊花の師。遺した覚え書き「遅れは保温。急に冷やすな」は、二人の恋の調理法=小皿の哲学として生き続ける。

硝都の人々/巡吏
砂海に架かる【仮橋】を管理し、対岸と往来する住人たち。「誰の顔でも渡れる顔」へ輪郭を寄せる列の在り方が、〈渡る恋〉と〈呼び寄せる恋〉の対比を際立たせる。
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