メメント・モリ
高校を卒業し大学に入学したばかりの妹が死んだ。
僕より3歳若かった。父の泣く姿を見たのは初めてだった。
僕はこの現実を受け止めきれず、涙を流すこともできない。
死とは何なのかがわからなくなったのだ。
妹は僕より年下だから、先に死ぬのは僕のほうだと思っていた。
ましてや18歳で死ぬなんて考えたことも無かった。
あまりに早すぎる。死とは人間がもっと歳をとってから訪れるものではなかったのか。
僕は、死を忘れていたことに気づいた。
妹の死は、僕に人生というものを一から考えさせるきっかけとなった。
死を忘れてはならない。
僕も明日には死んでいるかもしれない。
人間とはそういうものだ。
ならば今日を存分に楽しまなければいつの日かきっと後悔する。
ある日突然、理不尽に、無意味に、無価値のまま死ぬのは辛い。
今日を楽しむことも無く、来世に楽園があるという宗教観を持っているわけでもない。
僕のような人間の死は本当に意味のないものだ。
自分の死に場所は自分で選べるようになりたい。
いつの日か訪れる死に備え、その日までは生きていられるという保証が欲しい。
そうすればきっと、僕も少しだけ強く生きられるきがするから。
死ぬ日がわかっていれば、
その日までに自分がしたい事と、自分に出来ることの折り合いをつけて納得ができるから。
自分の限界に納得ができるから。
誰か僕に死を教えてよ…。
今日を楽しみたい。
でも妹の死が理解できない僕では、今日が楽しめない。
僕に必要なのは死に場所だ。
自分で納得できる死に場所を見つけたいと、僕は思う。