夢
「夢」を見つけてくださりありがとうございます。この作品があなたに刺激を与えることを祈っております。それでは、いってらっしゃいませ。
「っうわぁあぁぁぁっっ!!」
空気を切り裂くような悲鳴で目が覚めた。視界に広がる見慣れた部屋に、それが自分の声だと認識するまで、さほど時間はかからなかった。体中から嫌な汗が吹き出し、激しい動悸がする。しばらく夢の内容を思い出そうとしていたが、全く思い出せない。何か不吉な夢を見たことは覚えているのだが…。
「響也!朝ごはんよ!」
階段の下から俺のことを呼ぶ母さんの声が聞こえる。
「今、行くよ」
所詮、夢は夢だ。考えたところで、別にどうもならないだろう。悪夢を見たところで、朝はやってくる。そんなことを考えながら、リビングに向かった。
「なぁなぁ響也!お前テストどうだった?」
にやける顔を隠しつつ、無言で答案を渡した。
「は?!お前、五十二点!?赤点じゃないだと…?」
「あんまり俺をなめるなよー?」
仲間だと思ってたのに!とか喚いているそいつ、翔琉は俺の幼馴染だ。
「お前なぁ、もう大学受験だぞ?さぼってばっかじゃいられねーっつーの」
そうだけどよぉと、翔琉が泣きまねをしていると、クラスメイト達が集まってくる。
いつも通りの日常。それでいい。特別目立ったことはせず、流れに身を任せる。
それが俺のやり方だ。俺も、小学生の頃はやんちゃで、無理をしたり見栄を張ったりしていたが…もう、それは昔の話だ。
大人しく過ごしていれば、無駄につかれないで済む。
その日は、それ以上夢について深く考えずに過ごした。学校に行き、授業を受け、家に帰る。いつも通りの日常に、俺は今朝見た夢なんてほとんど忘れていた。
何事もない平和な一日を過ごした後、俺はベッドに入り、眠りについた。
ここは、どこだ?
どうやらどこか知らない家の中にいるようだ。誘拐という言葉が頭をよぎったが、俺以外に人が見当たらない。月光がさしているから、きっと夜だろう。どこか冷気の漂う家の中に、俺は寒気がした。はやく、はやくここから出よう。俺はその一心で、扉を探した。少し埃のかぶった、その扉を開けると、そこには、さっきと全く同じ空間が広がっていた。
どうして、どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうし
その言葉で頭の中が埋め尽くされた。不思議なものだ。極度の恐怖に陥ると、俺は前も後ろも見ずに、突っ走ってしまうようだ。しばらく同じ部屋を何回も通り過ぎた。
いつ、いつ終わるんだ、これは!
息もきれ、足が進まなくなり、立ち止まった。どうせまた同じ部屋だ。疲れ果てて気力もないまま183個目の扉を開いた。するとそこに広がっていたのは、さっきまでと同じ部屋ではなく、広いプールのある庭のようなところだった。
あぁ、解放された
俺は、安心と疲れで、その場に座り込んでしまった。すると、疲れ切った俺の前に一つの影が落ちた。なんだ、人がいたのか、とより安心しきった俺は、何の疑問を持たずに顔を上げた。
そこで、顔を上げたのが間違いだったのかもしれない。
そこにいたのは、人ではなく、俺と同じくらいの背丈をした大型の犬だった。いや、犬といっていいのかわからない、こいつは二足で立っている。そいつの顔を見た瞬間記憶が一気にフラッシュバックした。あぁ、俺はこいつを知っている。そして悟った。
こいつは俺に復讐しに来たのだ……
あれは、俺が小学1年生で毎日のように公園で遊んでいた頃だった。ある日、俺はいつもと同じように公園に行くと、道端の茂みに段ボールがおいてあった。中には大型犬として有名なゴールデンレトリバーの子犬が捨てられていた。中には丁寧に0歳6か月と書いており、その大きな二つの目が俺を見つめていた。
「お前、捨てられたのか?」
クゥーンと鳴く子犬を見て、俺に悪戯心が芽生えた。
そうだ!こいつを箱の中に閉じ込めて、道路に放置してみよう!
当時の俺に善悪の区別がつくはずもなく、面白さや刺激を糧に突っ走っていた俺はそれを実行してしまった。しかし、当時ガキだった俺は所謂ワルに憧れていて、みんなに自慢するネタが増えたと喜んだ。しばらく物陰から様子を見ていたが、遠くから車が来るのが見えて、俺は怖くなり家に逃げ帰った。
その後のことはあまりよく覚えていない。
「続いてのニュースです。今朝、〇〇県××市にある住宅街にて、子犬の遺体が発見されました。今日午後5時頃、住民から「道路中央に置かれている段ボールから血が流れている」との通報を受け、警察が向かったところ、段ボールの中から子犬の遺体発見しました。警察は………」
不幸中の幸いといってよいのか、段ボールを道路に置いた俺の姿を見た人はおらず、罪に問われることはなかった。月日が流れ俺はこの記憶にふたをし、当時の天真爛漫な性格とは真逆のひねくれた性格となってしまった。
思えば、これまで見た夢は、いつもこの家だった。ずっと、同じ夢をループしていたのだ。ここからの展開は、もう何度も経験した。そいつは、持っている斧を振り上げる。そして、俺の頭上に………
最初の方はここに来るまでにこんなに疲れていなかった。一体、どうい―――………
「っうわぁあぁぁぁっっ!!」
空気を切り裂くような悲鳴で目が覚めた。視界に広がる見慣れた部屋に、それが自分の声だと認識するまで、さほど時間はかからなかった。体中から嫌な汗が吹き出し、激しい動悸がする。まただ。半年くらい前から寝覚めが悪い。そろそろ病院にでもいった方がいいのかと、ふとカレンダーに目をやったとき、今日の日付が目に入った。それを見た瞬間身体中に衝撃が走り、頭痛と吐き気に襲われた。そろそろ本格的に病院に行ったほうがいいな、そう思いながら気だるげな体を起こしてリビングに向かった。
学校から帰って、ベッドに入る。疲れ果てた体に、睡魔が襲ってきた。もうすぐ眠りに落ちる…
というときだった。
………「ユルサナイ…」
なんだろう、今の声は…不思議に思ったが、睡魔には抗えず、眠りに落ちた。
…そういえば、11年前の今日は……………………。
「続いてのニュースです。今朝、〇〇県××市にある住宅で、男子高校生の死亡が確認されました。発見時、男子高校生は二階のベッドに横たわっており、呼びかけに応じないことに違和感を感じた母親が向かったところ、息をしておらず、死因は不明とのことです。警察によると………」
「夢」を読んでいただきありがとうございます。この作品は私の処女作であり、とても大切な作品です。この作品が誰かの日常を少しでも彩るお手伝いができていたら幸いです。ぜひとも感想やコメントをくださると、筆者はとても喜びます。よろしくお願いいたします。