プロローグ
19歳の茂木純一は、レストラン岩井でバイトしている成山大学1年生。静岡県に住んでいる。
4月のとある土曜日。
朝8時。
29歳の兄・夏と、姉・神子の1人息子・純と住む茂木探偵事務所の2階のリビングのソファで、純一はテレビをつけてニュースを見ていた。
夏は純一の隣で新聞を読んでいた。
「そういや、明日って・・・」
純一はそう言いかけると、テレビに映っていた女の天気予報士を見る。
「明日は雨だな」
夏はテレビを見ながら言う。
「雨か」
純一がそう言うと、純がそばにきた。
「純。お前、ヒマじゃねえか?」
「ヒマ・・・」
「そうか!ならレストランでも行くか」
「どこのレストラン?」
「あー、隣にオレが働いてる岩井って店があるから、純も来いよ。来たこと無いだろ?」
「・・・」
純はうなずく。
「よし、純。一緒に行くか」
夏は純に言った。
「うん」
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レストラン岩井は、朝8時から夜8時までやっているレストランだ。
純一は、店のドアを開けた。店自体はそんなに大きくはないが、メニューはとても美味しいと評判が良い。店員たちは皆んな、レストラン岩井のエプロンを着ている。
「純一、おはよう。あれ、純に夏さんも一緒じゃん」
店員として働いている純一の幼馴染・石田健太が話しかけてきた。
「純がヒマそうにしてたから、兄貴も一緒に連れて来たってわけ」
純一が石田に返事をする。
「おーい、純一!」
黒髪のボブヘアの女性・古川真美が純一に話しかけた。真美は、純一と同い年で幼馴染だ。
「真美」
純一は返事をした。
純と夏はイスに座った。
メニュー表を机の上に置いた純は、真っ先に「パンケーキ」と言った。
「おっ、パンケーキか!」
レストラン岩井のエプロンに着替えた純一が応えた。
「純くんじゃん!久しぶり」
長い茶髪の女の店員が出てきて話しかけて来た。
彼女の名前は、花川心桜。石田と同じく、純一の幼馴染だ。
「純くんっ!」
レストラン岩井の店員でもあり、有名イラストレーターでもある純一の幼馴染・谷山龍太が純に話しかけた。
「・・・」
相変わらず、純はそんなに喋らない。
「もー、なんか言ってよ〜」
花川は純のことを可愛がっており、会うとすぐ純と話しかけるが、純は何も返事をしてくれないのである。
「いったい純は誰に似たんだか・・・」
純一は苦笑いしながら自分の双子の弟を思い出した。
あまり喋らず、少し冷たい性格だった彼。純を見ると、たまに彼のことを思い出してしまう。
高校を卒業した後、東京に行った双子の弟・純平。現在は連絡が取れず行方不明になっている・・・はず。
しかし。
純平がどこかで、犯罪組織に入っていることを、純一達はまだ知らない。