真実
もうすぐひと段落つきそう!!
まずいな...
俺は心の中でつぶやいた。
みんな10階層までとはいえ、疲れがないわけじゃない。主力の上代や鬼塚はレベル上げを頑張りすぎて防戦気味になってきている。
俺は勇者様の身代わりだからその時まで引っ込んでろ、と隅に追いやられた。
はぁ、勝手な奴らだなぁ
まぁ、俺の出番ももうすぐかもな...何せ8体ものオーガだ。抑えられてる今が不思議なほどだ。
「おい、無能!」
「...はい、何でしょう。」
呼ばれてみると、そこには鬼塚と佐伯がいた。
佐伯が焦ったように言う。
「俺が今からお前にデコイの魔法をかける。お前は囮になって、あの崩れた橋の周りまで逃げろ!」
は?
意味がわからなかった。何を言ってるんだ?
橋が崩れているというのは、騎士団長がオーガたちを突き落とすために破壊したものだ。
倒せずとも、落とせばいいって考えだ。
今の所一体も落ちてはいないが。
だがデコイって確かモンスターを誘き寄せる魔法だったよな?
返答できないでいると、鬼塚がイライラしたように言った。
「あー、めんどくせーな!とっとと囮んなれっつったんだよ!このままじゃ全滅だ。身代わりのお前でも守れるのはせいぜい一人か二人だろ。なら誰も死んでない今、お前が囮になって死ねばみんな助かるんだよ!」
もうめちゃくちゃだ...
話にならない。でも俺に拒否権はない。
どうするかと顔をしかめると、鬼塚はなぜか笑った。
「まぁただ囮になって死ねってのも辛いだろうからなぁ、おれがメイドの土産にいいこと教えてやるよ。」
「?」
俺が混乱していても、鬼塚は構わず言った。
「お前の家に火つけたの、俺なんだよ」
は?
わけがわからない、何でだ、どうしてだ、何が理由があったのか?いや、あったとしても火をつけるほどのものじゃないはずだ。...だとしたらまさか!?
「いつもの暇つぶしだとでも言うつもりか?」
怒りを堪えて言った、今喧嘩しても勝ち目はないし、時間もない。
「ああ、そうさ。お前の悲しそうな顔を見るのは楽しかったぜ?どうだよ?家族の仇にボコられてた気分はよぉ?」
ッ!?...そうか、火事の次の日、こいつらが笑ってたのはそう言うことかよ...このクズどもが!!
俺は怒りと悔しさで体が震える。
「あぁ〜、すっきりした。正人、やっていいぞ。」
鬼塚が何でもないように言う。
「...ッ!?おい、俺はまだ了承してないぞ!」
俺は急いで言った。
「あぁ?雑魚に拒否権なんてあるわけねえだろ。いいか?周りを巻き込まねぇように、デコイがかけられた瞬間、すぐに崩れた橋の落ちるギリギリまで突っ走れ。いいな?...正人、やれ」
「はいよ。...惹かれよ、魔物を誘き寄せる生贄へその身を集え!デコイ!!」
俺の体が一瞬光る。すると...オーガたちは動きを止め、俺にギロリと目線を向けた。
次回、海斗は生きることができるのか?