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帰郷、そして恋

「さあ歩きましょう、お嬢様」


クロードがリナに手を差し出す。

リナは黙って手を取ると、クロードに手を引かれ、魔王城へ続く道へ足を向けた。

普段ならこんな事は屈辱以外何物でもないのだが、

この非常事態において、戦闘慣れしたクロードはとても頼もしく見えた。

もし彼が王族ならこの場で求婚してる位である。

いや、もういっそ平民でもいいかも~とまで思うリナ。

しかしそうなると周囲の反対がーと頭を悩ますリナであった。

その解決方法を思いつくのはもう少し後である。

ちなみにルーカスとの再婚約はもうどうでもよくなっていた。



「ねえ、まだ歩くの~?」


「もう少しの辛抱です、お嬢様」


先程の乙女モードはどこへ行ったのか、愚痴り始めるリナ。

部隊は壊滅状態で残るは僅かの兵士、そしてリナとクロードの二人。

本当なら引き返すべきなのだが、リナの意地とクロードへの恋心からもっとこの状況でいたいという気持ち、そしてユークリッドから湧き出てくる不思議な勇気からか、リナの頭に撤退の二文字はなかった。

それにしてもドレスというのは歩きにくい。


「さあ、着きましたよ」


ここは魔王城に一番近い村で、最果ての村と呼ばれている。

最短ルートを通ったのでかなり早く着いた。

といっても道中には強力な敵達がいて、全てクロードが倒してくれた。

本来ならユークリッドの力で楽勝なのだが、まだ危険だとクロードが身を挺して守ってくれていた。

守られるその度に、リナの恋の天秤は大きく揺れ動いていた。


―最果ての村


「懐かしいな……出た時と何も変わっていない」


ここはクロードの懐かしき故郷でもある。


「はぁ~疲れた。早くベッドで休みたい……て随分と貧相な村ね」


「魔王城が近くにありますから、補給も滞って発展してないんです」


「ふ~ん」


興味無さげに周囲を見渡すリナ


「でもここの奴等は強いですよ。協力を頼みましょう」


肉眼で見える程魔王の城は近いのだ。

村人も強くなければ生き残れないだろう。


「でもあなたこの村に詳しいわね」


「ええ、ここの出身ですから」


なるほど、通りでクロードが強い訳だ。

ん?ここの出身?ということは……リナははっと思い出した様に言う。


「え、それならご両親にご挨拶しとかなきゃ。あ、主としてね!」


「俺の両親はもう死んでます……」


「そう……、なんかごめんなさい」


「いえ、気にしてませんから」


クロードはニッコリ笑って返答したが、そこには悲しげな面影があった。


「(悪い事聞いちゃったかな)」


付き人の心境を察し、しかも謝るなど以前のリナではあり得ない事だった。

この感情はクロード故にだろうか。

そう思うと少し胸が絞めつけられる感覚を覚えた。


「とりあえず村長の所へ行きましょう」


「そ、そうね」


ともあれリナは納得するとさっそく徴兵、もとい支援を頼みに村長の家へと向かった。


―村長の家


「テスタロッサ家のご令嬢がよくおいでなすった。してなんの御用ですかな?」


老人が尋ねてくる。

魔王城最前線の村の村長というだけあって、覇気に満ちている。

筋肉こそないが、只者ならぬ風格を持ち合わせていた。

リナが言葉を考えている間にクロードがさっと前に出る。


「魔王討伐に力を貸して欲しいんです」


「お主、確かクロードじゃったか。魔王退治とは穏やかじゃないのう」


リナが言葉を考えている内に今後の戦略を考える村長とクロード。


「よし、決まったわ!勇者である私に従いなさい!異論は認めないわ!」


リナがユークリッドを抜き声高に叫ぶ。

しかしその場には小間使いのメイドが一人いるだけだった。



「まだ拗ねていらっしゃるんですか、お嬢様」


リナは置いてきぼりにされた事に腹を立てていた。

当然である、この旅の主役である自分を無視したのだから。


「でー、作戦はどうなったのですかー、勇者のクロードくーん」


投げやりにリナが尋ねて来る


「わかりましたよ。謝ります、謝りますから……」


「最初からそうしてればいいのよ」


「で、作戦はですね……」


クロード達の立てた作戦はこうだ。

まず村民達が先陣を切り魔王城までの道を切り開く。

そこをリナとクロードが中に乗り込み魔王を倒すという物。

これまでは魔王に対峙できる者がいなかった為できなかった特攻作戦だが、

クロードとユークリッド(とその使い手リナ)がいる為可能となった作戦だ。

常人ならば断固拒否する所だが……


「いい作戦じゃない、やってやるわよ!」


意気揚々と承諾するリナ。


「よく受ける気になりましたね。やめてもいいんですよ?」


リナを心配するクロード。

大きな犠牲を払いここまで来たのである、ここで帰っても王子達も認めてくれるだろうし、再婚約の可能性だって十分ありえる。

しかしリナは首を横に振った。

リナが魔王を倒した後、クロードが倒した事にしてしまえば彼は勇者だ。

勇者であるクロードとリナとの婚約に周囲も反対しようがないはずである。

その為にリナは危険でも魔王討伐の作戦を引き受ける事にしたのだ。

それに危険は感じていたが「いざという時はクロードが守ってくれる」リナはそう確信していた。


「ここで逃げたら勇者の名が泣くわ!それに……」


「それに……?」


「いざっていう時はあなたが守ってくれる……のよね?」


リナは顔を赤らめて小声で言った。


「はい、勿論です!」


クロードはリナの気持ちを知ってか知らないでか、はっきりと答えた。

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