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婚約破棄

「リナお姉様、ルーカス王子とのご婚約おめでとうございます」


「ま、当然よね」


豪華な庭園で優雅にお茶会を楽しんでる令嬢達。

その中心にいるのが今回の主役リーナ・テスタロッサ(通称リナ)、

そしてその妹のエスタリア・テスタロッサ(通称エスタ)である。

二人とも公爵令嬢であり、いずれも誰もが羨む美貌の持ち主。

ただ性格は正反対で、腹黒く自己中心的なリナと清楚でおしとやかなエスタ。

男性が内面を知れば選ぶのはエスタであろう。


「じゃあ婚約祝いにとっておきのショーを見せてあげましょうかね」


リナがニヤつきながら指を鳴らすと、黒装束の男が現れた。

端正な顔立ちで腰には二本の剣を差している。

彼の名はクロード、リナの護衛兼付き人だ。


「クロード、この剣を抜いてごらんなさい」


「リナお姉様、それは……!?」


その剣は伝説の武器ユークリッド。

その剣振るう者、剣聖が如き才能を与えられ、あらゆる魔を滅する魔力を得ると言う。

故に剣を抜いた者は魔王討伐の義務と責任が与えられるとか。

王家代々誰も抜いた事のない、ルーカス王子に継承されるはずの王家に伝わる秘宝である。


「私如きが……?承服しかねます、お嬢様」


「あんたは私の言う事を聞いてればいいのよ!」


リナが鞘にはまったままのユークリッドをクロードに投げる。

思わず逆さまに受け取ってしまうクロード。

剣が抜ければ彼は勇者である。


が、抜けず……!当然であると言えば当然だ。

剣士であるとはいえ、平民の出である由緒無い血筋の彼に王家の剣が抜ける訳がない。

それは彼自身が一番よく分かっていた。


「…………」


クロードは無言で鞘の埃を払うと、リナに跪いて剣を差しだした。


「まーったく、剣の一本も抜けないなんて情けない剣士様ね!」


周囲の令嬢達からは程々の笑い声が上がる。

無茶ぶりとは分かっているが、リナの機嫌を損ねる訳にはいかないのだろう。


「お姉様、もうその辺で……」


エスタがたしなめる……が逆効果、リナがニヤついた笑顔をエスタに向ける。

そしてクロードからユークリッドをひったくると、それをエスタに向けた。


「ひっ!?」


「誰に口答えしてるのかしら~?」


鞘が付いているとはいえ剣は剣である。

あまりの出来事にエスタはその場で立ちすくんでしまう。

取り巻きの令嬢達が支え、扇でエスタを仰いでいる。

どうやら人望もエスタの方がある様だ。


「(まったくこんな剣一本がなんだと言うのかしら)」


普段から余興としてクロードに狩りをさせたり剣舞をやらせたりと、

真剣を見る事に慣れていたリナからしたらエスタ達の反応は過剰反応もいい所だった。


ガチャガチャ


リナが剣を弄っていた、その時である。

すぽーんと剣にはまっていた鞘が抜けたのだ。


「いやいや、そうはならないでしょ」


ぼーぜんと鞘の抜けた剣を見つめるリナ。


「なってますわ!」


立ち直ったエスタが鋭いツッコミを入れて来る。


「リーナお嬢様、クロード王子殿下がお呼びです」


悪い事は重なる物で、兵士から呼び出しが掛かって来た。

きっとこのユークリッドを持ち出した事がバレたのだろう。

リナはすっぽ抜けた鞘を探すが一向に見つからない。

仕方なく抜き身のまま剣を持っていく事にした。



―王子の部屋


「リナ、僕のいない間にユークリッドを持ち出しただろう!」


「はい、ごめんなさい……皆に見せてあげたくて……私って駄目な婚約者ですよね……」


リナは涙を流しながらルーカスに抱き着く。

勿論嘘泣きである。


「反省してるならいいんだ、もう二度としないでくれよ?」


「はい、申し訳ございません王子様」


「二人の時はルーカスで良いって言ったろ?婚約してるんだからさ」


「はい、ルーカス様(政略結婚ですけどね)」


リナは嘘泣きモードを終了すると、抜き身のままのユークリッドを差し出した。


「リナ……これ、鞘が―」


「分かっていますわ。今付き人達に総出で探させている所で、間もなく見つかる―」


「そういう事じゃない!」


「ひっ!?」


普段は温厚なルーカスが大声を張り上げる。

たかが剣一本如きに大袈裟さね……これだから男は―等と考えていたリナだったが、

ルーカスの顔は怒ってると言うより、ただただ驚いている様だった。


「こ、この剣は誰が抜いたんだい!?」


ルーカスの問いに私は正直に答える。


「私、ですわ」


私は胸を張って答えた。

こんな剣一本如きで嘘など付いても、後がややこしくなるだけだ。

この程度、ちょっと怒られて終わりだろう。

そう思った矢先だった。


「君とは婚約破棄させてもらう」


「えええええええええええええええええええええええええええ!?」


リナは両の目が飛び出る程驚いていた。




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