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意気地なしの青蛙すら
軽蔑するくらいの
汚いコートを羽織った男一匹が
ある日突然目から涙をほとほと落として
成程!成程!と
そればかりを言っている
凱旋門に、丁度陽の光は差し込んだか………
ナポレオンに、踏みつけにされた者たちの呻きが
低く、低く響いている
あっ、肉体よ、肉体にたぎる、眩しいくらいの憎らしさよ
干からびてしまった私の胸中を
抱き締め、撫で回すのは
やはり同じ哀しさを背負った裁判官である
彼は何も言わない、されど無言は沈黙ではない
私はまた、彼によって死刑にされた幾人かを想って
いたたまれなくなるのだ
私だって罪人だ!!
出歩く先々、パン屋しかない
一様にオレンジの照明をつけて
ショーウィンドウに並べた白パンの中にはクリームなど仕込んで
イエスにでもなったつもりだろうか
パンを飢えた人々に配る……そして受け取る人々は
既に神など失っているのに




