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「地球のこの球体を,ぷかりぷかりと浮かべている、風化した冷笑を、私は直視もできずに愛しているらしい」
朝食はブラックジャックだった。
ちなみに、とうとう母は吹き出して、冗談はよしてよ、というふうに手を振る。
「酔いは、酔いだけは人を殺すのだ。それ以外で死が訪れることなんか、あるわけはないのだから」
「それでもこの通りは、エメラルドが一面に敷き詰められて輝いている。見たまえこの朝日の煌めきを!諸君、美の普遍とはつまり、くだらなさ、つまらなさだ。筒抜けの、陵辱された、マドンナではないか?」
マドンナ!しかし……。
沈黙は破られることをおのずから望み、身悶えする。
耐えられない。
「痩せっぽっちめ」
「痩せっぽっちめ」
「痩せっぽち」
「上等なシルクは、ロバにすべて食べさせた。ここで残っているのは、今でさえ君や僕の顔を紅に染め上げている、この年季の入ったガスランタンだけさ。こいつは、もはや売っ払ったって、一銭にもならん品物だ。では、どうしてこいつは、燃え続けてるのか?」
知らなかった。知らないことばかり、この検察官は追及してくる。どうして、これほどまでに微笑んで話してくるのだろう。
「仲直りを一生繰り返す必要があったので、それに飽きてしまった我々は、月面の片隅に身を寄せて、安いナポリタンをすすっていたのです。そこへあなたが現れた!」
いつだったか、遠く、もう思い出せるわけもない昔に、人類は自由をすっかり投擲し、歓声を上げて、それぞれに適したピラミッドの階層に収まっていったのであったが………。
第一この妙な匂いはどうしたことだ。まるで陣痛に呻く口から漂っているかのように、矛盾した、匂いがする。
「ナフタリンを買ってきてくれ!今すぐにだ。それくらい、無償でされたっていいはずだ、私は生きたんだ、生きたんだ………




