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呼応  作者: 師走
3/40

3

眠る人の ほんの少し開いた口から

夢の語りべが体を伸ばし、古びた本を朗々と読んでいる

彼の頭に載せられた、異様に大きな茶色いとんがり帽子は

時間が経つと次第にずり落ちてくるので、ページをめくるとき以外は左手で押さえている


時分はすっかり夜中であるが、家のそばの電柱に寄生したほんの小さなLED電球が白い光線を撒くせいで

カーテン越しに明かりは届き、語りべの影は恐ろしく伸びている


掛け布団は半分ほど跳ねのけられ、ベッドからはみ出して床まで垂れる

くう、くう、と寝息がかすかに洩れている

100円ぽっきりの目覚まし時計はカチ、カチ、と秒針を刻み

枕元で充電コードに繋がれたスマートフォンは、新着メッセージが来たことを合図してぽつりと点灯する


そのうち、語りべは

色とりどりに変化する服の話を聞かせた、友達が手当たり次第に家族を殺す話を聞かせた、花がしぼむ前にできるだけ遠くへ逃げる話や、それから憂鬱なイルカをどうにか慰める話を聞かせた


本はいつしか途切れたらしい

真っ白になった紙に目を落とし、意味もなくその端をいじり

ほぅ、と語りべはため息をつく


名残惜しげに、天井についたシミを見つめ

ゆっくりと眠る人の口の中を降りて行く


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