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呼応  作者: 師走
29/40

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あんな所に高々と日章旗が揚げられている

それを見て自分の国を誇らしく思う

そして訳が分からない

海の果てのアメリカ

私はアメリカを見下している


静まり返った大地

茫漠とする頭で、ようやく意識される この飛び出た一房の寝癖

誰か私に楽しみをください


私には語り会える友がない

大きな怪我をしてからずっと。

私は自分の不運を嘆いた

おもちゃみたいな、馬鹿にでかいギプスを足にはめこんで、

胸にはチクチクと縫い針の軌跡を残して

未だに病院の、清潔な天井を思い出す。

たちの悪い不治の病は

私を着々と犯し続ける


無人島に寝転がって

もはやこの世界に、他者というものは存在しないのだなと妄信する

砂浜へ、戯れに書いた『HELP』という字は

もはや満ちた潮に溶け出し、柔らかい風にほだされてなくなってしまった

全的な孤独は、フジツボのように皮膚にこびりつき

体内にもさらさらと侵入を続ける


一度すっかり諦めてしまったものは

もはや再び再開されることはなく

ほら、また中途半端なやり残しの仕事として、

つまり、私の負の実績として、

脳みその襞の合間に潜り込む

呆れたものだ、私には、「やりきる」という能力が、先天的に欠落しているのである


一日に一度、必ず地球が廻るということが

これ程までに私を鬱々とさせるなら

この世界における、ありとある法則なんて、全く瓦解してしまえばいいのに

環境を構成する細やかなパーツがみんな剥げ落ちていって、何にも残らなければいいのに

私は私が大事、多分何よりも大事だ

それでいて、いつも傷つけてばかりいる

握りしめたガラスを腕に走らせて、傷口から滴り落ちる赤黒い血液を眺めている


私は私を不安定な存在だと感じた

この世界に、私は不釣り合いだ

だから、世界か、私か、どちらかが消え去ってしまえばいいのに

私は私が大事、何より大事、けど、世界はあまりに強固で、私はこんなにも儚い


一方的な愛


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