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うだうだと、何も決まらないままに、時が過ぎてゆく
あんなにのろまだった1日が、今度は恐ろしいまでに駆け足で進む
今。
カツンカツンと音立てて、日本国旗と校旗とが、それぞれのポールにぶつかっている
掲揚されっぱなしにされた旗どもは、しょぼくれて下を向き、いくらか硬そうなその布は、ちらちら震えて、ヒグラシの叫びばかりを吸い込んでいる
先ほど短く降った絹のような雨のお陰で、コンクリートのくぼみには、冴えた水たまりができた
そこに映るレンガ造りの校舎は、顔を上げて実物を見るより幾倍か綺麗だ
豊かで、質素で、消え入りがちな、清貧の美だ
小さな波紋を繰り返し響かせる、虚像としての完璧さだ。
電灯は、ほとんど消えてしまったけれど、取り残されたロッカー室と会議室は、今が見せ場と張り切っている
銀の空を鳥が鳴き、ねぐらへ帰っていく
そして私の胃はきりりと痛む
そうだ、
湿った空気は、それでも爽やかに流れ、
遠くの山にはゆったりと霧が立ち
一日は、このようにして足早に、終幕の音楽を奏でていた
そして私………




