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紺色の僕たちは  作者: 神代 緋音
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第6話 逃亡

第6話 逃亡



「助けて」



そんな言葉、どうして言えたんだろう。

この男ならわかってくれるとでも思ったのだろうか。


「なんかごめん、急に助けてとか笑っちゃうよね」


咄嗟に出た言葉に、羞恥心が巡り巡って恥ずかしい。


「なんで謝るの、僕は君の力になりたいんだよ」


今まで誰も私の言葉をそんな風に受け止めてくれる人なんていなかった。


「だってあんたには関係ないことじゃん」


そうだ、この男には、何も関係ないことだ。

ましてこの男が私を助ける義理なんてどこにもない。



「さっきまでの素直なひよりはどこにいったのかなー笑」



「関係ないなんて言わないで」



やわらかい声、優しい瞳。

さっき一瞬だけ見せた、あの怖い男の姿はもう消えていた。



「依はさ、私の言葉、ちゃんと聞いてくれるんだね」


「まあね、、って、え!い、いま依って言ったよね!」


ふと呼んでしまったのだから仕方ない。

嬉しそうな顔でこっちを見てくるからそういうことにしておいてあげよう。





「これからどうしたい?」

慣れた手つきでパソコンを開きながら訊ねる。



「あの人に見つかりたくない、連れ戻されるなんて死んでも嫌。

けど、あの人から逃げる方法なんて死ぬ以外ないかも。」



前とは違って、今すぐ死にたいとは言わなかった。



「じゃあ、今すぐ死ぬ以外に選択肢があればいいんだよね?」


依にはいつも心の内側を見られているようだ。


「あるの?」


死ぬことしか考えていなかったから、生きることを前提に考えるのは私には難しい。




「逃げよう、一緒に」



依は真っ直ぐ私の目を見て言った。

まるで、そう言おうと前々から決めていたのでないかと思うくらい真っ直ぐだった。



「いや、そんなことして見つかったら、本当に誘拐犯になっちゃうんじゃん」


最初の約束が現実味を増すようだ。


「そしたらさ、その時はひよりが僕のこと恋人って紹介してよ」


「はいはい…。」


もうこの手の冗談には慣れてきた。軽く受け流す。


「やけに素直じゃん、もしかして僕のこと好きになっちゃった?」


「は、はぁ!?」

(ダメダメ、動揺するな…)



「なわけないでしょ、それに大体私17だから、誘拐と淫行でどっちもアウトだと思うけど。」


「真剣に愛し合ってたら大丈夫だよ」


「知らないから」


その時が来るってわかったら、私はこの世界にいないかもしれないけど、とは今は言わなかった。



「で、逃げるってどこに逃げるの?」


逃げるなら一刻も早く逃げなければならない。

バイト先の人が既に通報しているかもしれないし、私を追う手はもう近くまで来ているはずだ。


何やらさっきからカタカタとパソコンをいじってた依の手が止まった。




「奄美大島」





















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