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8.守衛の業務外

 凍季が3ヶ月後に迫るある日、朝食前にテディ様から声がかかった。


「懇親パーティ…ですか?」

「そ、懇親パーティという名の凍季に食っていけないやつの乞食会だけどね。」


 渡された書類をざっと見ると、学院内懇親集会と記されている。

 1番下には“出資 モルガネイソン家、フロスト家”と書いてあるところ欠席はできないらしい。


「俺って立場的に玉の輿狙われまくってるからさ、このパーティじゃ格好の的なわけ。

エマなんて連れてったら何言われるか分かったもんじゃないから、フィルに来てもらおうと思って。」


 どう?と眉を下げて大きな瞳で上目遣いしながら伺われて、少し息が詰まる。

 この人は自分の顔の良さをよくわかっている…


「…テオ様に許可を」

「昨日の夜に取ったよ」


この男、抜かりない…

 仕方なく首を縦に振ると、ありがとうなぁと抱きしめられた。


 それからパーティのためと仕立て屋へ出向いて採寸をした。

 この屋敷に来た時に作ってもらった執事服はあるけれど、2年前にフロスト家の本家に招かれた時以来来ておらず、かなり丈が足りなくなっていたのだ。


「フィルは随分成長したね。 初めて会った時は同じくらいの背丈だったのに」


 採寸の面倒を見てくれているテオ様がサイズの記された紙を置いて見上げてくる。

 俺の目線にちょうどおでこが当たるくらいのテオ様の身長は、17歳の平均くらいだろう。

…ふとテディ様の事が思い浮かぶ。 テオ様とはよく目が合うけれど、テディ様は髪がよく目に入る。


「あ…ご主人って、テディ様よりも背が高い…ですか?」

「ああそうだね、そこまで大差ないけど。」


 約3年仕えてきたけど知らなかった…

 テディ様はローブのフードを被ったり、そのローブの下にはヒールの付いた靴を履いている時もあり、小さく見えないらしい。


「フィル、回路の組み方は知ってる?」

「え…と、体内の魔力の巡りを操作できる人種が、強い魔力で物体に回路を彫る…んですよね?」


 これはテディ様に聞いた事がある。

 屋敷に来てから、世の中の魔術に関する常識を叩き込まれたのだ。


「そう。 つまり魔術士って自分の体内の魔力の巡りをねじ曲げて、勢いをつけて大量に外に出してるんだ。

これって小さい頃から訓練を積んでると成長が阻害されやすい。

にい…テディは魔力量が少ない分、寝る間も惜しんで訓練してたらしい。」


 本当に魔術狂だよ、とテオ様は遠い目をして苦笑いするけれど、以前ご主人の訓練に付いた時に地獄を見た。 そのテオ様がこの反応ならどれだけなのか…


「失礼いたしますフロスト卿、執事服のお色はどうなさいますか?」


 そう言って仕立て屋の店主が持ってきたのは何種類もの黒色の布。

 テオ様の髪や目の色に合わせた金やライムグリーンのブローチやピンを重ねて、微妙に違う色合いや柄を比較して見せる。


「ああすまない、今日は私のではなく弟の従者として色を決めてほしいんだ。」

「これは失礼しました。テディ卿ですと…」


 店主は弟の従者と聞いて一瞬怪訝そうな顔をしたが、すぐに飾り箱から赤のブローチを取り出す。

 それはそうだ。 フロスト家の従者は、家紋である一対の翼が飾られたブローチを着けているのだが、俺のブローチについた宝石は透明度の高い黄緑色。

誰がどう見ても、テオ・フロストの従者であると分かるのだから。


「エマは確か…深紅のガーネットが付いてたね」


 そう言いながら暗い赤の飾りを指さして、テオ様と店主は布を選んでゆく。


「そうだ、私の従者としての執事服も仕立てようか。 好きな色を選ぶといい。」

「え…?に、2着目ですか!?」

「あって困るものじゃない。 …弟の方はパーティ用で、彼が選んだものは軽くて動きやすいものにしてもらえるだろうか?」


 俺が何かを言う前にテオ様と店主は話を進めていってしまう…

 渋々積まれていた布のサンプルを手に取ってみるがよく分からない。

 布を両手に挙動不審になっていると、後ろから声が聞こえた。


「もう父さん、お客様が困ってらっしゃる。」

今回から表記諸々がややこしくなる予定ですが、懇親パーティまでフロスト兄弟についてのお話になります。

権力と金のある美形双子をどうぞよろしくお願いします。

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