未だに慣れない二人
――――――
「全く……瑠衣は本当に自分勝手何だから……それで、何処に向かっているの?」
皐月さんは僕に手を引かれながら呆れた表情でそう言って来た。
「……あーもう二人の両親にも皐月さんには会って欲しくって……ここまで来て何ですけど……良いですか?」
僕は少し言葉にし辛かったが、恐る恐る皐月さんにそう訊いた。
「……なるほどね……馬鹿ね私がそれを断る訳ないじゃない……」
皐月さんは納得したようで、そう言うと僕の事をそっと抱きしめて来た。
「そうでしたね……本当に僕は馬鹿です……」
そんな分かり切った事だったのに、言い出せなかった事を後悔した。
「それじゃあ行きますか? きっと元旦ですから僕たちだけでしょうし……」
僕は長い長い坂道を見上げながら皐月さんにそう言った。
「……こうなるならもっと歩きやすい服装にしておくんだったわ……」
皐月さんにしては珍しく、パンツではなくスカートを履いていた。
「……確かに珍しいですね……言われて気がつきました……何かあったんですか?」
僕は皐月さんにそう言われてから、皐月さんがスカートを履いていることに気がついた。
「……はぁ……気が付いてなかったのね……」
皐月さんは僕がそう言うと大きな溜息を吐いた。
「あはははは……本当にごめんなさい……でも皐月さんも悪いんですよ?」
僕は苦笑いをしながら、素直に謝った。
「……? どう言う事?」
僕の言った意味が分からなかったようで、皐月さんは不思議そうな表情をしていた。
「……だって皐月さんどんな服を着ていても可愛いんですもん……」
僕はそう言いながら、照れてしまった。
「ど、どうして瑠衣の方が照れているのよ……」
皐月さんは僕に可愛いと言われて、あっという間に顔を真っ赤に染めた。
「……」
「……」
それから長い長い坂道の先にある、僕の本当の両親が眠るお墓があるお寺に辿り着くまで無言の時間が続いてしまった。
 




