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情報屋『剣持勇』

――――――


 皐月先輩とデートの約束をした日の夜、僕はベッドの中で悩んでいた。いざ、遊びに行くと決まるとそれはそれで困ったこともある。まず、皐月先輩の趣味が分からない、普段どんなことをしてるのかさえ知らない僕にとっては、しかも、女の子とデート何て初めての経験だ。どんな所に遊びに行けばいいのか何て全く検討がつかなかった。しばらく布団に包まりながらうーうーうなっていると、偶然にもユウから電話が掛かってきた。僕は、すぐさまユウに相談すればいいことに気がついた。自称情報通のユウなら皐月先輩の趣味も分かるかも知れない。そんな淡い期待を持ちながら、電話に出た。

「もしもし……ユウ。皐月先輩の趣味って何かな? 分かるよね?」

 ユウからの電話だというのにも関わらず、ユウの要件も聞かずに僕の要件を電話に出た瞬間に一方的聞いた。

「ちょ、おま……こっちから用があって掛けてんのにいきなりそっちから話をするってどういう神経してんだよ……んでどうして?」

 いきなりの僕が一方的に会話の主導権をとった事に驚きながらも、流石はよく僕のことを分かっている。ユウは多少文句を言いながらも僕の質問を聞き返してくれた。

「今週の日曜に皐月先輩とデートする事になったんだけど、どんなところに行けばいいかなぁと思って。デート何て生まれて一度もしたことないからさ」

 僕の話を聞いている途中から、ユウはあわあわ言っていた。そんなに一度もデートした事がないのに驚いたのだろうか?

「ちょっと待て、瑠衣、どーしてそ〜なった?」

 やはり可笑しい事だったのだろうか? 高校生にもなって一度もデートをした事が無い何て……

「そんなに可笑しいかな? デートした事無いの?」

 あまりにもユウが驚いていたので、僕は少しテンション低めに聞き返していた。

「そんな事に驚いたわけではない、生徒会長とデートという事に驚いたんだよ、いつの間にそんな仲になったんだよ」

 僕は、何だそんな事に驚いていたのかと思いながらも内心かなり安心していた。高校生にもなってデートした事ないのに驚いているならどうしようかって思った。

「そこまで、進展した気はしないんだけどね。皐月先輩の方がデートだって」

 僕の言葉にさっきよりもユウは驚いたらしく、受話器から物凄い音が聞こえてきた。

「熱っ、あんまり驚かせないでくれよ。ったくコーヒー零したじゃねーか」

 今の音は、コーヒーを零した時の音だったのか、と少し安心しつつ話を本題に戻した。

「それでさぁ、皐月先輩の趣味とか女の子が喜ぶ所って何処かな? 自称情報通の勇君?」

 少し馬鹿にしたように、でも少し真面目にあえてあだ名では呼ばず本名で質問を投げかけた。

「おっと、自称は余計だぜ瑠衣。親友の頼みなら断れねーな。普通なら少なからず料金は取るんだが……特別に無料(ただ)でいいぜ。デートの場所だが……動物園あたりがいんじゃねーかな、あの人は見かけによらず動物が好きみたいだからな」

 僕の真剣さが伝わったのか、いつも以上に真面目に答えてくれた。こういう時は流石に頼りになる奴だなと改めて感じた。

「ありがとう、勇。君が親友でよかったよ」

 僕は純粋に感謝を述べただけなのにユウは『よせよ』とかいって少し照れていたようだった。本当に良い友達を持ったと感じながら電話を切った。

 その後すぐに、ユウから電話がもう一度掛かって来たのは言うまでもない……

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