変わり身の術?
――――――
「さて……もうそろそろか……」
ユウは境内がほんの少しだけ静まり返ったタイミングで時計を見ながらそう口にした。
「……せーの……」
「「「「「明けましておめでとうー」」」」」
周りのカウントダウンに合わせて同じように盛り上がりながら、年が明けたタイミングで僕たちは一斉にそう言った。
「何だかこう言うのも良いですね……去年まででは絶対に考えられなかったですよ……」
僕は周りを見ながら、しみじみにそう口にした。
「……何だかおじさんみたいな言い方ね瑠衣?」
皐月さんはそんな僕に対して失礼な事を言って来た。
「……全く失礼ですね……僕がおじさんなら皐月さんはおばあさんじゃないですか……」
口にしたから僕もとんでもない事を言ってしまったと思い、慌てて口を塞いだが既に遅かった。
「……何ですって? 瑠衣こっちに来なさい」
鬼の形相を浮かべた皐月さんがこっちに向かって手招きをしていた。
「……あはははは……九重先輩変わり身の術です!」
僕は九重先輩の後ろにあっという間に隠れるとそう叫んだ。
「うん? なるほどね……皐月さんそんな事言わないで下さいよ……」
九重先輩は僕の意図を察してくれたようで、直ぐに僕の真似をして皐月さんにそう言った。
「……自分で言っておいてなんですけど……九重先輩やっぱりすごいですね……自分ではイマイチピンと来ないですけど……恐らく滅茶苦茶似てるんですよね?」
皐月さんたちの驚きようを見て、九重先輩の僕の真似があまりにも似過ぎているのは伝わって来た。
「瑠衣が声を出していた訳じゃないのよね?」
さっきまでの怒りは完全に驚きで上書きされたようで、皐月さんは心底驚いた表情をしていた。
「えぇ……僕は一言も話してはいませんよ? 全部九重先輩が話してました」
僕はそう言うと、皐月さんたちは目を丸くしていた。
「そんなに驚く事はないじゃないか……こんな事くらい誰でも出来るだろう?」
とうの本人は特に自慢げにする事もなく、さも当たり前のようにそう言っていた。
「……これは何かに使えそうですね……」
僕はそんな様子の九重先輩を見ながら、色々な事を頭の中で考えていた。




