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可もなく不可もなく

――――――


「すまない待たせたかな……」

 一番最後に到着したのは、何故か制服姿の九重先輩だった。

「どうしてこんな日まで制服なんですか? せめて私服で来ましょうよ……」

 少し待たされた事よりも何故制服なのかの方が気になり、僕は九重先輩に開口一番そう言っていた。

「……何か問題でもあるのかい? そもそも学生が制服を着ていても問題ないじゃないか……」

 九重先輩は自分の服装を改めて確認しながら、少し困ったような表情でそう言って来た。

「……まぁ、別に良いですけど……そうだ九重先輩これ食べます?」

 僕は渋々納得して、思い出したかのように袋を差し出した。

「これは何だい? 食べ物かい?」

 九重先輩は餌を待っている犬のように、目をキラキラさせながら僕に近付いてきた。

「え、えぇまぁ、食べ物と言えば食べ物ですけど……」

 僕はあまりにもグイグイ来る九重先輩に対して、若干引きながらそう返した。

「……それじゃあお言葉に甘えて頂こうかな……」

 九重先輩は大喜びで袋を僕から受け取った。

「……瑠衣。これは一体何だい? クレープ? でもソースもかかってるし……新しい食べ物かい?」

 九重先輩は袋の中身を見て、首を傾げながら僕にそう聞いて来た。

「……粉物です。たこ焼き、お好み焼き、クレープですかね」

 僕は袋に詰め込んだ、数々の粉物の名前をあげた。

「……なるほど……うーん背に腹は代えられないか……」

 九重先輩は覚悟を決めたようにそう言うと、袋の中身を口した。

「……大丈夫なの?」

 一番心配そうにしていたのはその中身を知っている皐月さんだった。

「……んぐんぐ……んー」

 九重先輩は食べ進めながら、しきりに首を傾げていた。

「美味しいですか? 本当はユウにあげるつもりだったんですけど……気に入ってもらえたなら良かったです」

 僕は食べ続けている九重先輩を見ながらそう言った。

「……あれを俺に食べさせようとしていたのか……相変わらずやる事がエグ過ぎるだろ……」

 僕の言葉を聞いて、ユウは身体を身震いしていた。

「……正直美味しくも不味くもないね……」

 袋の中身を食べ終わった九重先輩は丁寧に袋を畳んでから手を合わせた。

「そうですか……それは残念です……」

 僕は特段美味しくなかった事に対してやるせない感じだったが、食べた本人がそこそこ満足そうにしていたので納得する事にした。

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