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まるで獲物を狙う狼のように

――――――


「うわー凄いわね……こんなに賑やかだとは思わなかったわ…/これじゃあまるでお祭りみたいじゃない」

 いつもよりもゆっくりと歩いていたせいか、近くの神社に着いた頃には小一時間が経とうとしていた。

「……確かにこれは凄いですね……話には聞いていたんですけど実際来るのは僕も初めてだったので」

 僕も皐月さんと同じように、辺りを見回しながら驚きを隠せないでいた。

「おっ……来たな瑠衣。会長ういーっす」

「どもでーす」

 約束の時間にはまだだいぶ早かったが、ユウと楓ちゃんは既にこの状況を楽しんでいた様子だった。

「う、ういーっす?」

 皐月さんはユウの今風な挨拶に若干戸惑いながらも、そのまま言葉を返した。

「何だもう来てたんだ……」

 わざわざ早く出て来たのだから、デートしたかったと言う気持ちの方が強く、不機嫌な表情になってしまった。

「どうした瑠衣。随分と暗い表情だな」

 僕が普段はあまり見せない表情をしていたものだから、ユウは心配そうに僕の顔を覗き込んできた。

「……ガルルルル……」

 恐らくユウの事だ。分かっていてこんな事をしているのだろう。その事に気が付いた僕はまるで獲物を見つけた狼のように牙を剥くとユウを威嚇した。

「どうどう……ユウちゃんを食べても美味しくないよ? 食べるなら私をどうぞ……」

 楓ちゃんは慌てた様子で僕とユウの間に入ると、僕の方に身体を差し出してきた。

「……それじゃあいただきま……って言う訳無いでしょ楓ちゃん? 全く本気にしたらどうするの?」

 僕は危うく流れのままに楓ちゃんに齧り付こうとしたが、寸前で違和感を覚え何とか踏みとどまった。

「うーん。それはそれで良いかなって思って……」

 楓ちゃんは顎に手を当てながらそう言うと、口元を緩めた。

「……えー」

 僕は何と返したら良いか分からず、そんな声しか出なかった。

「まぁ、時間はまだあるし……約束の時間になったらまた集合しようぜ……それじゃなー」

「あ……待ってよユウちゃんー」

 僕が呆気に取られていると、ユウはそう言ってとっとと何処かへ行ってしまった。

「……はぁ……もう滅茶苦茶だよ……」

 僕はユウたちが消えた方を見ながら大きな溜息を吐く事しか出来なかった。

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