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後輩(ぼく)と先輩(かのじょ)の恋物語  作者: 白城縁
十二月 クリスマス
82/126

二つで一つ

――――――


「そうだったわ……危うく忘れるところだった……」

 宴も終盤になり、料理もほとんどなくなりかけて来た時に、皐月さんは急に思い出したようで、立ち上がりながらそう言ってきた。

「……わわっ!? 急にどうしたんですか?」

 僕は急に立ち上がった皐月さんに対して驚いてしまい、危うく飲み物をこぼしてしまうところだった。

「……あら、ごめんなさい……大丈夫?」

 僕が慌ててコップを支えている様子を見ながら、そっと手を包んでくれた。

「……な、何とか大丈夫です……」

 僕は飲み物がこぼれなかった事に安堵すると、一つ深く息を吐いた。

「そう……それは良かったわ。それで思い出したんだけど……これ受け取ってもらえるかな?」

 皐月さんはそう言うと、少し顔を赤く染めた。

「……? 僕に、ですか?」

 僕は首を傾げながら、皐月さんから可愛くラッピングされた小さな袋を受け取った。

「えぇ……折角の誕生日だし、それにクリスマスでもあるから何か記念になるものを渡したくて……」

 そう言った皐月さんの表情は、不安と恥ずかしさが混じったような感じだった。

「……開けても良いですか?」

 僕は皐月さんが頷いた事を確認してから、破かないように綺麗に包装を剥がし始めた。

「……これは……キーホルダー?」

 包装を剥がした先に待っていたのは半分に割れたハートのような形をしたキーホルダーだった。

「……これを見て?」

 皐月さんは僕が不思議そうにしている様子を見て、ポケットから携帯を取り出した。そこには今貰ったキーホルダーの片割れと思われるハートの形をしたキーホルダーが付いていた。

「……二つで一つって意味ですか……随分とお洒落なプレゼントですね」

 僕は直ぐにそれにはそう言う意味が込められている事に気がついた。

「……そうもあっさり気付かれちゃうと何だか悔しいけど……瑠衣が嬉しそうな表情をしているから良いか……」

 皐月さんは一瞬頬を膨らませたが、直ぐに笑顔へと変わった。

「うん、そうですね……ありがとうございます。でも僕何も準備してません。なので、取り敢えず歌を歌います」

 僕はそう言いながら、何かあったときの為に鞄に入れておいた『ボクカノ』の音源が入ったCDを取り出して、慣れた手つきで宴会部屋にあったCDコンポを操作して再生した。

「……随分久しぶりに歌う事になるから、正直自信ないけど全力で歌います……聞いてください『ボクカノ』」

 前説からの完璧なタイミング歌い出した僕は、あの時感じた気持ちよさをもう一度思い出すことが出来た。

 年が変わるほんの一週間前の出来事。最後の最後にこんなサプライズが待っているなんて思いもしなかったけど、このメンバーなら何度でも起きそうな、そんな予感がした。

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