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『遊び』に行くのでは無く『デート』に行く

――――――


 生徒会室へ着いてすぐにドアをノックする事もなく思い切りドアを開きながら、皐月先輩がいるかどうかを確認した。見ると皐月先輩はいつものように窓際にある椅子に座って本を読んでいた。

「皐月先輩っ……逢いたかったですよー」

 僕はいつも以上に甘えた声を出しながら、皐月先輩に近付いて行った。近付いていく途中でいつものように能登先生の邪魔が入るかと思っていたが、今日は何故か間に入ってくることはなかった。が……ニヤニヤした顔をしていたのが印象に残った。

「どうしたの? 今日、生徒会はおやすみよ」

 心底不思議そうな顔をしながら、皐月先輩は僕に言葉を返してきた。そんな皐月先輩の顔も最近よく見慣れてきたような気がする。そんな皐月先輩にもしかしたらという淡い期待を込めて……

「皐月先輩。今週の日曜は暇ですか?」

 特に要件も決めずにきた僕は、咄嗟に前々から考えていた事を口に出していた。

「どうして?」

 以前なら言葉を掛けても頷いたり首を振ったりするぐらいだったが最近は普通に言葉を返してくれた。

「皐月先輩が暇なら一緒に遊びに行きませんか?」

 この言葉を言った瞬間、皐月先輩だけではなく能登先生も目を丸くして驚いている。

「水野君。私なんかと遊びたいの?」

 皐月先輩は驚いた顔から少し寂しそうな表情を変えながら僕に言葉を返した。

「皐月先輩じゃなきゃ嫌です。僕は皐月先輩と遊びに行きたいんです」

 僕は少し駄々を捏ねたような声で言うと皐月先輩だけではなく能登先生もさっきよりも驚いた表情をしている。能登先生に関しては驚いた表情の後、まるで悪魔のような笑みを浮かべていたのだが……

「わかったわ。そんなに言うのであれば行ってもいいわ。ただし時間と場所はキミが決めて、デートなら男の人が計画を立てるのが当たり前でしょ?」

 皐月先輩は今まで僕に見せた事のない年相応の笑顔を魅せてくれた。その事以上に僕は『デート』という言葉に僕のテンションは最高潮になっていた。

「皐月先輩。後で連絡しますね。それでなんですけど連絡先とか教えてもらえますか?」

 僕は恐る恐るといった感じで皐月先輩にそう訊いた。

「私、携帯持っていないの……だから直接逢いに来てもらえる? 放課後にでも」

 皐月先輩は目を伏せながら申し訳なさそうに僕に言ってきた。そんな皐月先輩の表情でさえ愛おしく可愛いと思ってしまっている僕はどうかしてしまったのだろうか?

「分かりました。明日の放課後また来ます。いますよね?」

 なるべく早めに決めておきたかった僕は、すぐに明日来ることを告げ、能登先生に一言声を掛けてから生徒会室を後にした。

 その時の僕の表情は今までの人生の中で一番幸せそうな顔をしていただろうと後になってから思った、この先待ち受ける様々な出来事に思いを馳せるかのように。まるで一筋の光が差したように……

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