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後輩(ぼく)と先輩(かのじょ)の恋物語  作者: 白城縁
十二月 クリスマス
79/126

幼き日の記憶

――――――


「すまない……瑠衣お前だけ残してしまうのは……気が引けるが……」

「瑠衣が無事なら……私たちはそれで……」

 目の前にいる二人は僕に向かって息絶え絶えにそう言って来た。

「……」

「……」

 それだ言うと満足したのか二人は動かなくなってしまった。

「ねぇ返事をしてよ……ねぇってば……」

 周りからは沢山の人の叫び声が聞こえていた。

「……」

 ゴムの焼けた匂いと、鼻につく鉄の香り。僕はその嫌な匂いに包まれたまま気を失った。

「……瑠衣君。キミが無事だっただけでも本当に良かったよ」

「今日から私たちがあなたの親よ」

 直ぐに場面は切り替わり、今度は見慣れた家のリビングが見えた。

「……? 言っている意味が分からないんだけど……お父さん、お母さん」

 僕が不思議そうに首を傾げると、お父さん(・・・・)とお母さん(・・・・)は口元を押さえた。

「大丈夫? 何か悲しいことがあったの? でも大丈夫。僕はここにいるよ?」

 幼き日の僕は、そう言いながら二人に抱きついた。

「……あっ……あぁ……」

 そこで全てを思い出した僕は現実世界へと戻って来た。

「……そっか……そう言うことだったんだ……僕はあの日事故に遭って、両親を同時に失った。幼い心では耐えきれず、その事故の記憶ごと消してしまっていたと言うことか……」

 僕はまるで他人事のようにそう言いながらも涙は止まらなかった。

「……瑠衣……」

 心配そうな表情をしている皐月さんは、握っている手に力を込めて来た。

「……ふぅーーすみません……お見苦しいところを見せてしまいました。もう、大丈夫です」

 僕はそう言いながら、皐月さんに抱きついた。

「あははは……でも、やっぱりすみません……もう少しだけこのままで……このままで居させて下さい……」

 何とか心を落ち着かせようとしてみたが、中々上手く行かず僕一番安心出来る皐月さんの腕の中へと逃げ込んだ。

「……勿論よ……瑠衣」

 皐月さんそれ以上何も言う事はなく、そっと抱きしめ続けてくれた。

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