表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
後輩(ぼく)と先輩(かのじょ)の恋物語  作者: 白城縁
十二月 クリスマス
75/126

見覚えの無い天井

――――――


「……んっ……」

 目を開けるとそこは見覚えの無い白い天井だった。

「……ここ……は?」

 気を失った事までは覚えているが、その後何があったかなんて僕の知る由もなかった。

「……すぅー……すぅー」

 微かに聞こえて寝息で、ここに僕以外の誰かがいる事が分かった。

「……皐月……さん?」

 既に当たりは真っ暗になっていて辛うじて月明かりで、顔を確認する事が出来た。

「んっ……瑠衣……」

 目覚めてはいないようだったが、寝言で僕の名前を呼んでいた。

「……そうか。ここは病院か……何があったんだっけ? ぐっ!?」

 気を失った時何があったか鮮明に思い出そうとした瞬間、頭に強烈な痛みが走った。

「……無理に思い出そうとするな……」

 二人しかいないと思っていた部屋の中からもう一人の声が聞こえてきた。

「……能登……先生? どうして……ここに?」

 保健室ならまだしも、どうして能登先生がこんなところにいるのかどうか分からず、そう訊き返した。

「んー説明するのは面倒なんだが……まぁ、紛いなりにも生徒会の顧問だからな……そう言うことにしておけ」

 能登先生は珍しく歯切れの悪い感じでそう言ってきた。

「……分かりました。そう言うことにしておきます。でもすみませんご迷惑をかけたみたいで……」

 僕はそれ以上追求する事はせずに頭を下げた。

「……」

 僕のお礼の言葉に対して、ふっと口元を緩めただけで何かを言ってくる事はなかった。

「……僕はどうしたら良いんでしょうか?」

 答えを求めたわけではなかったが、つい口からそんな言葉が出てしまった。

「……そうだな……個人的な意見を言わせて貰えば記憶なんてあってもなくてもどっちでも良いと思っている」

 少し悩んだ様子だったが、能登先生はそう返してきた。

「……医療関係者とは思えない言葉ですね……でもその方がありがたいですね……すみませんくだらない事を聞いちゃって」

 能登先生の言葉で何処か吹っ切れた僕は、微笑みながら能登先生にそう返した。

「……ふっ……無理だけはするなよ? 困るのはキミじゃ無い。キミのそばにいる人間たちなんだから」

 能登先生はそう言うと、病室から出て行ってしまった。

「……なるほど……それはちょっと困ったな……」

 能登先生の言葉に僕は胸を痛めながら、それからしばらくの間月明かりに照らされた皐月さんの寝顔を見ていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ