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後輩(ぼく)と先輩(かのじょ)の恋物語  作者: 白城縁
十二月 クリスマス
74/126

記憶の片鱗

――――――


「悪いが少しだけ待ってろよ? 入って良いって言うまで入るなよ? 絶対だぞ?」

 ユウは念を押すように何度もそう言うと、部屋の中へと入って言ってしまった。

「……うーん。一体みんなで何を考えてるんだか……うーんどうしたものか……」

 僕はユウにそう言われ、悩んでいる間に中から声が聞こえてきた。

「入ってきて良いわよ?」

 考えが纏まる前に声を掛けられてしまった僕は生唾を飲み込んでから三人が待つ部屋へと入って行った。

「「「「ハッピーバースデー!!」」」」

 中に入ると華やかな装飾と、いつもの生徒会メンバーがハッピーバースデーの言葉と共に出迎えてくれた。

「!? な、何ですかこれ?」

 全く状況を理解できなかった僕は、周りを見回しながら驚いていた。

「……何って誕生日パーティーよ? 見て分からない?」

 皐月さんは少し呆れたようにそう言いながら笑っていた。

「……誕生日? 誰のですか?」

 誕生日と言われてもまだピンとこなかった僕は、再度首を傾げながらそう訊いていた。

「……まさか自分の誕生日を覚えていないとは流石の俺もそれには気がつかなかったぜ……」

「本当に誕生日を覚えてなかったの? ルイ」

 ユウは少し驚いたように、楓ちゃんは少し心配そうにそう言ってきた。

「……誕生日……そうか、そうだったんだ」

 自分の記憶と共に誕生日も忘れていた事に今気が付いた。

「……親御さんから祝われたりしなかったの?」

 皐月さんも心配そうに僕を覗き込みながらそう聞いてきた。

「親? うっ……頭がっ!」

 僕は急に頭に痛みが走り、その場に崩れ落ちてしまった。

「瑠衣!!」

 皐月さんは僕の事を咄嗟に支えてくれた。

「ぼ、僕……は……」

 僕は頭の中がぐちゃぐちゃになり、何が何だか分からなくなってしまっていた。

「剣持君、橘さん。直ぐに能登先生に連絡して。九重さんは救急車の手配とお店の人に連絡を!」

 こんな状況でも皐月さんは冷静さを失わず、テキパキと指示を出していた。

「さ、皐月……さ……ん。ごめん……なさい……」

 僕はあまりの頭の痛み意識を保っている事が出来ず、皐月さんの温もりだけを感じ、そのまま微睡へと落ちて行った。

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