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後輩(ぼく)と先輩(かのじょ)の恋物語  作者: 白城縁
十二月 クリスマス
73/126

いつもとは逆の二人

――――――


「こっちよ瑠衣! こっちこっち」

 翌日の朝急に皐月さんに呼び出された僕は昨日の商店街に来ていた。

「……皐月さん。いつに無くテンション高くないですか? やっぱり何か企んでるんじゃないです?」

 僕を見つけて手を振ってきた皐月さんを見ながら、僕は少し警戒をしながら声をかけた。

「……実はね今日瑠衣にサプライズを計画しててね。もう少しだけ付き合ってもらうわよ?」

 サプライズの当日となったせいか、今日は特に隠す事なく皐月さんはそう言ってきた。

「……? サプライズですか? 何だろ? 今日って何かありましたっけ?」

 僕はサプライズで何かをしてもらった事も無く、特に今日何か特別な日だった記憶も無かったので首を傾げていた。

「まぁ、まぁ、みんなも待ってるからこっちこっち」

 やっぱりいつもの皐月さんよりも一・五倍程テンションが高いようで、普段よりもずっと子供っぽかった。

「うーん。よく分からないですけど……皐月さんが楽しそうなんで良いや」

 僕はよく分からなかったけど、皐月さんがいつにも増して楽しそうだったので、特に気にする事はなかった。

「さぁ、さぁ行こうよ瑠衣」

 僕は皐月さんに手を引かれて、皐月さんのスピードに合わせて走り出した。

「何だか違和感がありますねーいつもは僕が皐月さんの手を引いている事が多かったのでー」

 僕たちはまるで風になったような勢いで走っていたので、ちゃんと皐月さんの耳に届くように、少し大きめの声でそう言った。

「確かにそうかもねーでもそれもたまには良いんじゃないーっとと危ないところだったわ」

 皐月さんも僕と同じように、少し大きめの声そう返してきた直後急ブレーキをかけた。

「うげっ!」

 急に皐月さんが止まったせいで僕はそのままの勢いで電信柱へぶつかる事になってしまった。

「あ……大丈夫瑠衣? ごめん……まさか通り過ぎそうになるなんて思ってなくて、急に止まってしまったわ」

 皐月さんにしては珍しく、本当にしまったと言う表情をしてかなり反省しているようで深々と謝ってきた。

「うぐっ……別に大丈夫ですよ……止まれなかった僕も悪かったですし……それよりも皐月さんの楽しいそうな笑顔が見れるなら僕は何だってしますよ?」

 僕は真っ赤になった鼻をさすりながら、少し涙目でそう返した。

「瑠衣……ありがとう。でも私だって瑠衣が笑顔でいてくれるなら何だってするわ……」

 そう言いながら皐月さんは僕をそっと抱きしめてくれた。

「皐月さん……」

「瑠衣……」

 僕たちは店の前だという事も忘れ、当たり前のように吸い寄せられて行った。

「……ごほんっ! 流石に店の前は迷惑だからやめた方がいいと思うぞ? なぁ、楓」

「う、うん。流石に所構わずはどうかと……」

 店の中から現れたのはユウと楓ちゃんだった。

「あれっ? どうしたの二人共奇遇だねー」

 僕は何事もなかったように二人にそう声をかけると、二人は大きな溜息を吐いた。

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