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後輩(ぼく)と先輩(かのじょ)の恋物語  作者: 白城縁
十二月 クリスマス
71/126

甘え、甘えられ

――――――


「はぁ、はぁ、はぁ」

 結局僕のスピードは落ちる事なく商店街に着くまでずっと駆け足のままだった。

「…瑠衣。はしゃぐのは分かるけど、そんな息が切れるまで走らなくたって良いじゃない」

 皐月さんは僕が息を切らしている様子を見て、呆れた表情でそう言ってきた。

「だって……で、デートです……よ? 時間……が、勿体無いじゃ……無いですか……」

 僕は息絶え絶えになりながら、皐月さんにそう返した。

「全くしょうがないわね。本当子供見たいね」

 皐月さんはまるで母親のような優しい笑顔だった。

「……むー何だか馬鹿にされてる気がします……」

 僕は頬を思い切り膨らませながら、皐月さんにそう言った。

「まぁ、良いじゃない。私の方が年上何だから。瑠衣が甘えたって全然良いのよ?」

 皐月さんはそう言いながら僕の頭を撫でた。

「ん……今はそうされる事にします……でも皐月さんだって僕に甘えたって良いんですらね? なんて言ったって僕は皐月さんの彼氏なんですから」

 僕はそう言いながら、背伸びをしながら胸を張った。

「……ふふっ、そうね。その時が来たらそうさせてもらおうかしら」

 皐月さんは微笑むと、少しだけ僕に体重を預けてきた。

「……ん? 何だか周りのみんなが僕たちを見ている気がしますけど……どうしたんでしょうか?」

 皐月さんの温もりを感じながら、真笑いの視線が僕たちに向いている事に気が付いた。

「……すっかり忘れていたわ……ここは商店街だったわね……」

 皐月さんは僕の言葉で、周りの視線が僕たちに集まっている事に気が付いたようで、少し顔を赤くしていた。

「……? 皐月さん何をそんな当たり前の事を言っているんですか? ここが商店街じゃ無かったら何になるんですか?」

 僕は皐月さんの言っている意味が分からず首を傾げながらそう言った。

「……はぁ、本当に瑠衣は色々と鈍いと言うか、天然過ぎると言うか……私もそんな風だったら全然気にならなかったのかも知れないわね」

 皐月さんは大きな溜息を吐くと、意を決したように僕の事を抱き寄せた。

「うわわっ……急にどうしたんですか? 凄く嬉しいんですけど、

何かあったんですか?」

 急に皐月さんに抱き付かれ、吃驚してしまった僕は珍しく慌ててしまった。

「……何でもないわ。瑠衣は瑠衣。私は私。それで良いんだよね?」

 皐月さんのその言葉は僕に言った言葉だったのか、それとも自分に向けて言った言葉だったのか、僕には分からなかった。

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