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後輩(ぼく)と先輩(かのじょ)の恋物語  作者: 白城縁
十一月 紅葉狩り
66/126

親友との時間

――――――


「これは見事なもんだな。いやー絶景絶景」

 さも当たり前のように隣にいるユウは辺り一面に広がる紅葉を見ながらそう言っていた。

「……どうして紅葉狩りは学年毎で違う日程なんだよ……折角皐月さんと一緒に楽しめると思ってたのに……」

 僕は感動しているユウを横目に浮かない表情をしていた。

「それは仕方がないだろう? なんて言ったって会長は俺たちより二歳も年上なんだから……そんなんでどうするんだ? 後半年もしない内に会長は卒業なんだぜ?」

 ユウは当たり前のようにそう言ってきたが、気持ちはどちらかと言うと紅葉の方に傾いている様子だった。

「……卒業……」

 ユウの何気ない言葉で、皐月さんとの学校生活はもうほんの数ヶ月しかない事に気付かされ、更に暗い気持ちになった。

「どうした瑠衣? 大丈夫か? 随分と顔色が悪いぞ」

 ユウはようやく僕の方を見てそう言ってきた。

「……ダメ……かも……皐月さん成分が足りない……もう動きたくない」

 僕はその場に座り込むとそう言いながらがっくしと項垂れた。

「……ったく仕方がない奴だな。ほれっ」

 ユウはそう言うと僕の前に屈み込んだ。

「ん」

 僕は何も言う事なく差し出されたユウの肩に乗った。

「よいしょっと……もっとちゃんと食べた方が良いぜ? これじゃあ楓より軽いんじゃねーか?」

 軽々と僕を持ち上げると、ユウはそう言って笑った。

「……ユウ」

「ん? どうした? あっ……」

 ユウはそう言いながら、直ぐ背後まで迫っていた楓ちゃんに気が付いた。

「私がどうしたって?」

 普段はかなり温厚な楓ちゃんも、やっぱり女の子でユウの事を思い切り睨んでいた。

「……あははは……冗談冗談。だからそんな怒んなって」

 ユウはそう言いながらも、辺りを横目で確認しているようだった。

「……じゃ、そう言う事で!」

 ユウは一瞬の隙を見逃さず、楓ちゃんから一気に距離を取った。

「あっ……ちょっと待って……」

 楓ちゃんがそう言った時には時既に遅く、僕たちは数十メートル先にいた。

「……ふぅ……あぶねーあぶねー」

 ユウはそう言いながら息を整えていた。

「あはは……いつもの事だろうけどダメだよ? ちゃんとしなきゃいつか愛想尽かされちゃうよ」

 僕は苦笑いをしながら、ユウにそう言った。

「……あぁ、分かってるよ。あいつは俺が幸せにしてやる。だから……お前も会長を幸せにしてやるんだな」

 ユウはそう言うとそれ以上何も語らなかった。

「……うん。分かってる」

 僕もそれ以上言葉を口にする事なく、周りの景色に目を向けた。

 たまにはこんな風に親友と一緒に過ごすのも悪くない。そう思いながら……

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