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後輩(ぼく)と先輩(かのじょ)の恋物語  作者: 白城縁
十一月 紅葉狩り
64/126

『先』の意味

――――――


「それにしても最近随分と機嫌が良いじゃないか。何かあったのか? 楓」

 あまり表情に出る事の無い、楓ちゃんがここ最近ずっと笑顔でいる事に気がついたハウは少し不思議そうにそう聞いていた。

「うーん。別にそんなつもりは無かったんだけど、やっぱり好きって言われると嬉しいじゃない」

 特に楓ちゃんは隠す事なく、普通にその言葉を口にした。

「……好きって……ちょっと待て、それは誰に言われたんだ?」

 ハウにしては珍しく、少し怒ったような声色でそう言った。

「……えへへー誰だと思う? 正解はルイでしたー」

 止めようとしたが時すでに遅く、その言葉は生徒会室内に響き渡ってしまった。

「……瑠衣ですって? 橘さん、その話を詳しくしてもらっても良いかしら?」

 真っ先に反応したのは勿論皐月さんで、僕と楓ちゃんを睨みつけるようにそう言ってきた。

「……あははは……そうだった。会長さんもいたんだった」

 楓ちゃんは苦笑いをしながら、一瞬の隙をついて生徒会室から飛び出していってしまった。

「……えっ? いつの間にいなくなったの? ふぅ……でもまぁ良いわ、もう一人の罪人に話を聞きましょう」

 皐月さんは凄く驚いた表情をしていたが、それも直ぐに元の怒った表情へと戻り、僕の腕をガッチリと掴んだ。

「……そんな罪人なんて言わなくても良いじゃないですか……別に僕は逃げませんよ。僕が愛しているのは皐月さんだけなんですから……」

 僕は掴まれた腕を利用してそのまま皐月さんに抱きつくと、耳元でそう口にした。

「……ちょ、っと瑠衣。耳元でそんな声出さないでよ……」

 皐月さんは怒った表情から一変して顔を真っ赤に染めた。

「……剣持君は橘ちゃんを追いかけるのだろう? だとするとボクの取る行動は……さらばだー」

 九重先輩は一瞬悩むような仕草をした後、行動方針を決めたようで、叫びながら生徒会室を飛び出していってしまった。

「はぁ……心配はしてないが確かに俺も話を聞きたいし、俺も帰るとするかーお疲れしたー」

 そんな僕たちの事なんてお構いなしに、ユウも生徒会室から出ていってしまった。

「……誰もいなくなりましたね……」

「……そうね。瑠衣……」

 僕たちはいつも通り、吸い寄せられるように近づいていった。

「……ごほん……」

 その瞬間生徒会室の隅から、わざとらしい咳払いが聞こえた。

「……別に私は気にしないが、それ以上先に行くなら流石の私も帰らせてもらうよ」

 完全に部屋に同化していたせいか、能登先生の存在に全くと言って良いほど気が付かなかった。

「うわっ……どうしているんですか……それより先って……どう言う意味……はっ!」

 僕はそう言いながら、能登先生が言った『先』の意味を理解して僕は顔を真っ赤に染めた。

「どうしたの瑠衣? 急に顔を真っ赤にして……」

 皐月さんは能登先生の言っている意味が分からなかったらしく、首を傾げていた。

「な、何でもないです! 皐月さんはまだ知らなくて良いです!」

 僕は少しどもりながら、そう皐月さんに言うと、二人分の荷物をまとめ、皐月さんの手を引いて生徒会室を後にした。

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