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後輩(ぼく)と先輩(かのじょ)の恋物語  作者: 白城縁
十一月 紅葉狩り
63/126

過去

――――――


「……それで続きを聞かせて貰っても良いかな?」

 しばらくの間無言が続いていたが、本来の目的である僕の過去の話を聞かない訳にもいかなかったので、僕の方からそう切り出した。

「……ふぅ……確かにそうだね。さてと何処から話そっかな」

 楓ちゃんは一つ大きく息を吐くと、顎に手を当てながらそう言ってきた。

「……私がずっと一人でいた事は覚えてるよね? あの頃は……と言うか、今も何だけど両親は共働きでね。私はずっと一人だった。そんな時に現れたのが、ルイだった」

 楓ちゃんは少し遠い目をしながら、そう言葉を口にした。

「私と違って明るい性格だったルイはいつも沢山の友達を引き連れていた。簡単に言うと、言葉はちょっとあれだけど近所のガキ大将みたいな感じだったのかな?」

 楓ちゃんにしては珍しく、心の底から笑っているような気がした。

「そんなルイだったからか一人でいる私に声を掛けてきたの。一緒に遊ぼうって……でも私と遊び始めたせいで、他の子たちの方がルイから離れていってしまって、それでもルイは私にいつも笑いかけてくれていたの……そんな風にされたら好きになっちゃうでしょ?」

 楓ちゃんは少し恥ずかしそうにそう言うと、一つ息を吐いた。

「……それって何処の聖人なの……正直な話信じ難いんだけど……」

 僕は楓ちゃんの話を聞きながら、それが本当の話なのか半信半疑だった。

「確かに子供の頃の記憶だから、脚色しているところもあるかも知れないけど、今話した事は紛れもない事実だよ。とは言っても私が知っているルイの事はこれくらいなんだけどね」

 楓ちゃんは普段はあまり自分から話をするタイプでは無かったので、少し話し疲れているようだった。

「……そっか、話を聞いている限り、それってやっぱり僕は楓ちゃんの事を好きだったんじゃないかな?」

 僕は話を聞いてそう確信した。

「……そうだったら嬉しいな。それが聞けただけでも話をしたかいがあったってものだよ」

 そう言った楓ちゃんの目にはうっすら涙が浮かんでいた。

「……ありがとう楓ちゃん」

 僕はあえて謝る事はせず、ただ一言感謝の気持ちを口にした。

 だってそうでしょ? 謝られるよりも感謝された方がずっとずっと気分が良いんだから……

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