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後輩(ぼく)と先輩(かのじょ)の恋物語  作者: 白城縁
十一月 紅葉狩り
60/126

いつか見た景色

――――――


「分かったわ……でも帰りながらにしない? どうせユウちゃんは戻ってこないだろうし」

 楓ちゃんはそう言うと、本を鞄にしまってから立ち上がった。

「……そうだね……僕も皐月さんとの約束がなくなっちゃったし」

 僕もそう言うと鞄だけを手にして、楓ちゃんの後に続いて生徒会室を後にした。

「……」

「……」

 しばらくの間、無言の時間が続いていたが、僕の方から話を振った手前、催促するのもどうかと思い無言を貫いていた。

「……随分と期待しているようで悪いんだけど、正直な話、ルイと遊んでいたのはほんの一年くらいだったし、あの公園でだけだったからルイが期待しているような話は出来ないかも知れないよ? それでも良い?」

 少し困ったような表情を浮かべながら、楓ちゃんはそう切り出してきた。

「うん。それでも構わないよ……楓ちゃんと遊んでいた事すら忘れていたんだ……その当時の事を思い出せればそれをきっかけに記憶を取り戻せるかも知れない」

 僕自身正直な話、記憶を取り戻したいと強く願っている訳では無かったが、折角再会出来た楓ちゃんの為にも、僕がもう一歩先へ向かう為にも、記憶を取り戻して損は無いと思い始めていた。

「……そっか、分かったルイ。私が知っている事を話すよ。そうだなーでも変わりと言っては何だけど、何処か入らない? 流石に歩きながらは辛かったわ……」

 楓ちゃんは僕の言葉を真摯に受け止めてくれたらしく、いつになく真面目な表情をしていたが、それは直ぐに崩れ、普段のやる気のなさそうな表情へと戻っていた。

「はははっ……それもそうだね。僕が奢ってあげるから好きなとこ選ぶと良いよ……」

 僕は楓ちゃんの普段と変わらない感じで、いい感じに緊張が解れ笑いながらそう返した。

「わーい。それじゃ一度行ってみたかった。今話題のカフェに行こうよーそこのジャンボパフェ食べてみたかったんだー流石に一人だと行くに行けなかったから丁度良かったよ」

 まるで子供のようにはしゃぎながらそう言うと、僕の手を引っ張った。

「うわっ! 別に引っ張んなくても行くから連れてくから……」

 そんな状況が昔ずっと一人でブランコに乗っていた楓ちゃんを僕が引っ張っていた状況と重なった気がした。

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