恋は盲目?
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あの会議から数日後、生徒総会が開かれる日となった。皐月先輩の生徒へのアナウンスによりで生徒総会はスムーズに進んでいた。皐月先輩に言われた僕の役目……書記。普通の人にとってはただの役割でしかないだろうけど、僕にとっては皐月先輩に頼ってもらえたという事でやる気はかなりある状態になっていた。ただ書くだけにそこまでのやる気が必要かと言われれば首を傾げることになるのだが……
流石は皐月先輩といったところで会議は何のトラブルもなくあっという間に閉会を迎えた。とは言っても普通の学校で行われるような今年度の委員会の目標とか、生徒会の活動内容とかの確認程度で何か意見が出るということはほとんどない状況ではあった。
「これで今年度の生徒総会を終わります。各クラスごと教室に戻って下さい」
行事を閉会するにあたってのお決まりの言葉を皐月先輩が言うと、今までの静寂が嘘のように体育館が騒がしくなった。たった一言で全校生徒を従えている皐月先輩を見て僕は何故か溜息をついていた。
「どうしたの? 水野君。そんな溜息何かついて」
いつの間にか僕の近くまで来ていた皐月先輩に声を掛けられる。
「い、いえ皐月先輩って生徒会長なんだなぁと思って」
僕がそう言うと何を当たり前の事を言っているのといった表情をした後、またいつもの無表情に戻った。
「まぁ良いけど、書いてもらったもの渡してくれる?」
一呼吸置いた後、皐月先輩は手を伸ばしながら言った。
「あっすみません。はい、抜けている部分があったり読めない所があったら行って下さい、すぐに行くので」
僕は素早く書いたものを纏めながら皐月先輩に言った。
「えぇそうするわ。という訳で今日は帰っていいわよ、お疲れ様」
皐月先輩は少し困ったような顔をしながら、僕にそう言って背を向けて歩き出した。
僕はその背中を見送りながら連絡が来るのを楽しみにしていた。連絡が来た時は自分が何らかのミスをしているかも知れないという事に全く気付く事もなく……
 




