懐かしい感覚
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「あれっ……そう言えば随分と久しぶりな気がします。一緒に帰るの」
僕たちは無言のまましばらく歩いていたが、僕は何だか懐かしい気分になったので皐月さんにそう言っていた。
「……えぇそうね……瑠衣がずっと私を避けている感じだったから、嫌われたのかと思っていたのだけれど……」
皐月さんはどうしたら良いのか分からないようで、少し困ったような表情をしていた。
「……何言ってるんですかー僕が皐月さんの事を嫌いになる訳無いじゃないですかーもうー冗談はよして下さいよー」
僕は皐月さんと手を繋いでいる能登は逆の手で皐月さんの腰あたりを軽く叩いた。
「……はぁ……何だかずっと悩んでいたのがバカらしくなってきたわ……」
皐月さんは大きな溜息を一つ吐くと、ガックシと肩を落とした。
「あー確かにそう言えば喧嘩中だったんでしたっけ? すっかり忘れてました。これも九重先輩のおかげかも知れないですね? 後でお礼を言わなくちゃ」
僕は九重先輩の一件のせいで、何で皐月さんと喧嘩をしていたかなんてすっかりと忘れてしまっていた。
「……明日あんまり僕の事見ないでくださいよ? カッコ悪い所しか見せられそうにないですから……」
僕はそんなくだらない考えは頭から振り払って、明日に迫った体育祭についての話題に切り替えた。
「そんな訳にはいかないわ。万が一瑠衣が怪我でもしてしまったらいち早く駆けつけないといけないのだから……ずっと見てるわ」
皐月さんは当たり前のようにそう言うと、僕に笑いかけた。
「……どうして僕が怪我をする前提なんですか……もしかしたら物凄く大活躍するかも知れないじゃないですか?」
怪我をする事を前提に話を進められ何だか、少しムカついてしまった僕は頬を膨らませながら皐月さんに言葉を返した。
「……ふふっ」
皐月さんはそんな僕の事を見て笑っていた。
「……ははっ」
ムカついていた僕もいつの間にか皐月さんの笑顔につられて笑ってしまっていた。久しぶりに過ごした皐月さんとの時間はやっぱりとても幸せだった。




