敵に回したくない男
――――――
「良いのかこのままで……」
体育祭前日の昼休み何処から湧いてきたのかいつの間に何僕の隣に座っていたユウから声を掛けられた。
「……何が?」
僕はユウの方をみる事もせず、そう言葉を返した。
「……何がって、お前なぁ……会長との事に決まってるだろ? 一体何があったんだ? ついこの間まではあんなに仲が良かったのに……」
ユウの事だ……僕たちがこうなっている原因何てとっくの昔に知っているのだろうけど、その原因を口にする事は無く、そう聞いてきた。
「……知ってくるせに」
僕は舌打ちをしてそう言うと、そのまま席を立ち教室から出ようとした。
「……まぁ、待てって……ちょっと話をしようじゃないか……」
普通なら怒ってもおかしくないのにユウは、そんな表情を一切浮かべる事なく、そう言うと僕より先に教室から出て行ってしまった。
そんな事をされてはついて行かない訳にもいかず、僕は渋々ユウの後をついて行く事にした。
「……」
「……」
移動している間、僕たちは一言も交わす事が無かったのと、最近の僕の機嫌の悪さが相まってかヒソヒソ話が聞こえてきた。
「……はーいちょっとごめんねー……」
そんな状況に嫌気が差した僕は、踵を返そうとしたがその前に、その生徒たちにユウが近付いて何やら耳元で囁いた。
すると、あれだけガヤガヤしていた廊下があっという間に静かになってしまった。
「一体何を言ったの? 何か数人の生徒が震えてるけど……」
あっという間に静かになった事にも驚いたが、、何故か数人の生徒がユウを見て怯えているように見えた事の方に驚きを隠せなかった。
「……ん? あぁ、ちょっとな本人しか知らないはずの情報を耳元でちょろっとな」
ユウはさして気にした様子はなく、そう言ってきた。
「……はぁ、やっぱりユウが親友で良かったと心底思うよ……」
僕は少し呆れたようにそう言うと、ユウは満更でもないようで恥ずかしそうな表情を浮かべていた。
「さて、と……まぁ、この辺で良いだろ」
ユウは少しニヤけた表情を正すと僕の目を真っ直ぐ見ながらそう言ってきた。
「……随分と珍しいとこだね……こんな所に連れてくる何て」
ユウに連れて来られたのは文化部の部室棟があるエリアだった。
「まぁまぁ、良いから入れって」
ユウに流されるまま僕は入り口に文芸部と書かれた教室へと入って行った。
 




