意地と意地のぶつかり合い
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結局あれから数日の間、皐月さんと個人的な会話はなく、生徒会室内での事務的な会話のみだった。
その異変には勿論周りの連中も気が付いていたようで、生徒会室内は不穏な空気で満たされていた。
「あーあ、あの……」
意を決したようにユウは僕たちに声を掛けようとしたが、僕たち二人からの無言の圧力によってそのまま言葉を飲み込んでしまった。
「全く大人気ないぞ二人とも……少しは周りの人間の事も考えろ……」
能登先生は大きな溜息を吐くと呆れたようにそう言ってきた。
「……」
「……」
それでも僕たちはその状況を変える訳でも無く、お互い一歩も引かない状況が続いた。
「まぁ、こんな風に他人に迷惑をかけてかけられるのも学生の特権と言うわけか……好きにすると良い」
僕たちの様子に呆れてしまったのか、能登先生はもう一度溜息を吐くと、何故か何処か懐かしむような表情を浮かべながら生徒会室から出て行った。
「……それじゃあ俺も用事があるから、お先しますね? 行くぞ? フウ」
このタイミングしかないというタイミングでユウは立ち上がると、僕たちに目を合わせる事なく楓ちゃんにそう言って手を取った。
「? 用事何てあったっけ?」
楓ちゃんは何が何だか良く分かってないのか、それともわざとなのかそんな事を言いながらユウに引っ張られて行った。
「……」
「……」
生徒会室には僕と皐月さんだけが残され、更に重苦しい空気へと変わった。
「「……あっあの…」」
こういう時はどうしてもタイミングは合わないもので、僕と皐月さんは同時に言葉を発した。
「皐月さんから……どうぞ」
「瑠衣から話してよ……」
こうなるとお互い後には引けなくなってしまい、更に無言の時間が続いてしまった。
結局この日も最後まで言葉を交わす事無く、そのまま体育祭の前日までズルズルと時間が流れて行った。




