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『恋』という感情

――――――


 僕は帰りのホームルームが終わってすぐにユウの言葉にも耳を傾けず生徒会室へと走り出していた。

「すみませーん、遅れました水野です」

 生徒会室のドアをノックしながら自分の名を告げる。とは言っても生徒会役員は会長の皐月先輩と顧問の能登先生しかいないのであんまり意味はないんだけどね。中からの返事は無かったが皐月先輩がいたとしても返事は無いだろうし、あの先生の事だから面倒だとか言って同じように返事はしないだろうと思い、そのままドアノブに手を掛けた。案の定ドアを開けると中には皐月先輩と能登先生がいた。

「いるのなら返事をしてくださいよ。まぁ予想は出来ましたけど」

 僕は少し呆れながら二人に対して文句を言った。すると皐月先輩は一瞥しただけ能登先生は煙草に火を着けながら面倒だからなと言ってきた。そもそも、生徒会室で煙草を吸って大丈夫なのかは謎だが。

「さて始めるか、皐月君」

 能登先生が皐月先輩に対し一言言うと、『はい』と気を付けていないと聞こえないような声で言いながら立ち上がった。

「えーっと今月の二十日に生徒総会を開催したいと思っています。生徒たちにはまだ日時は知らせてません。議長は私が、書記は水野君にお願いしたいのですが構いませんか?」

 皐月先輩は先程とは打って変わってはっきりとした、有無を言わせない威厳の満ちた声で僕に訊いてきた。皐月先輩の声をちゃんと初めて聞いたからなのか、名前を呼ばれたからなのか、僕の心臓は高鳴っていた。僕は間髪いれず『はい、喜んで』と皐月先輩の手を掴みながら言っていた。皐月先輩は口を開けて僕の顔を見ている。あぁ先輩ってこんな顔も出来るんだと心の中で思いながらニコニコしながら手を握りしめていると隣から長い溜息が聞こえてきた。

「この前も言ったが、お前は変態なのか? まぁどうでも良いが」

 自分でも何故、皐月先輩に執着しているのか、自分のこの気持ちが何なのか分からなかった。

「すっすみません。どうしてか僕自身分からないんです。皐月先輩を見ているとどうも心が落ち着かなくて……」

 すると、能登先生はまるで悪役のような笑みを浮かべて僕の耳元に口を近づけてこう囁いた。

「水野君。それは『恋』というものだと思うぞ? 若いっていいな。まぁ、今しか恋愛なんて楽しめないから存分に楽しむといいさ」

 能登先生はいつものような悪魔のような笑みを浮かべ『はっはっは』という笑い声を残し煙草に火を着けながら自分の席に戻った。

 この感情は『恋』かも知れないという能登先生の言葉。今の僕にはこの感情が『恋』だという確証は全くという程持つことが出来なかった。会議中僕は皐月先輩を見ながら『恋』とは何なのか自問自答を繰り返していた。

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