『ボクカノ』
「キャー瑠衣くーん、こっち見てー荒木くーんかっこいいー」
僕達がステージへ登ると直ぐに黄色い歓声が聞こえてきた。
「あれっ……こんなに人気があったんだー荒木、すごいねー」
僕は隣にいる荒木に向かってそう言った。
「お前こそな、お姉様方の注目の的だぞ? まぁ、そんな事はどーでも良いけど。さぁ俺たちの準備はオッケーだ。自分の好きなタイミングで合図をくれ。最高のショーにしようぜ」
荒木は力強くそう言ってきた。これ程心強い言葉は今まで無かった。柄にも無く緊張していた僕だったが、荒木の言葉ですっと気持ちが落ち着いた。
僕はゆっくりと会場の体育館を見回し皐月さんの姿を確認した。
「あっ……いたいた。皐月さーん見えてますかー? 他の人には悪いんだけど……僕は皐月さん、貴女の為に歌います。聴いて下さい『ボクカノ』」
初めて逢った時先輩は桜の木の下にいた
そこは近づき難く幻想的な空間だった
それでも初めてな気がしなかったのは気のせいだったのかな
僕は先輩に近付きたくて先輩のいる生徒会に入ったんだ
最初先輩は僕の事なんて気にせず窓辺で本を読んでいたよね
それでも次第に話すようになってようやく対等になれた気がした
先輩は僕の事何とも思って無かっただろうけど
僕は初めて逢った時からずっと好きでした・・・
今の関係になるまで僕はずっと我慢していた
ずっと抱き締めたくて温もり感じたくて
でも先輩は言うんだろう「我慢出来てないでしょ」と
僕が抱きついても嫌な顔しなかった先輩
そんな先輩の事どんどん好きになっていくのが分かった
これ以上ないくらいずっと好きでした・・・
たとえこれから楽しい事だけじゃなくても
辛い事があっても二人で分け合えればきっと幸せだよね
僕はそう信じてる 先輩もそう思ってくれると嬉しいな
いつまでも先輩といたい 僕の命尽きるまで・・・
『ウォーーーー』
僕の、いや僕達の歌が終わった後で大きな歓声が上がった
「ふぅふぅふぅ……はー大変だったー練習とはやっぱり違う大変さがあった。でも楽しかったー荒木誘ってくれてありがとう。ライブに来てくれた皆もありがとうーそして……皐月さんこれが今の僕の気持ちです。いつまでも……僕の命尽きるまで一緒に居てください。本当に今日はありがとうございました!!」
僕が感謝の気持ちを口にして僕達のライブは無事に幕を降ろした。




