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ファーストセッション

――――――


「うん、すごく良い曲だ。流石だな荒木。僕の思った以上の曲だ、これなら皐月さんも喜んでくれる」

 僕は荒木が歌っているCDを聴き終わった後、頭の中でリピートしながらそう呟いた。そんな風に思っているといつの間にか隣の部屋からギターやベースの音が聴こえてきていた。

「よーし。一旦休憩にしよう。やっぱお前たちはすげーよ。たった数時間で殆んど完璧じゃねーか」

 僕が音楽室へと戻ると、そんな会話が聞こえてきた。

「お疲れ様。荒木やっぱ凄いよ……キミは。すごく良い曲だった。これなら皐月さんも喜ぶよ」

 僕は音楽室へ戻ってすぐに荒木の近くまで行って荒木の肩を掴みながらそう言った。

「おっおう……そうか、それは嬉しいが……少し離れてくれ。近い」

 荒木は少し慌てながら僕から距離を取った。

「ごめんごめん、あまりにも興奮しちゃって……ねぇねぇ早速合わせてみようよ」

 僕は興奮しながら荒木に向かってそう言った。

「おいおい合わせるったって、俺らは何とかなるだろうけど、水野はちょっと大変じゃないのか? 今日聴いたばかりだろ? それに今までボーカルの経験なんてないんだろし」

 荒木は少し心配そうに僕に向かってそう言ってきた。

「大丈夫、大丈夫何とかなるって……ねっやろう? という事でそこのお二人さんもよろしくね!」

 僕は今度は荒木だけでなく荒木の後ろにいた二人に対しても言った。

「ったく仕方ないな。じゃぁ試しにやってみるか。じゃ始めようか。清水、工藤」

 清水、工藤と呼ばれた二人は少し微笑みながら自分の楽器の所へ戻った。

「じゃ、行くぜ、せーの」

 他の人が聴いていたら、これが初めてのセッションだとは思わないだろう。そう思えるほどしっくり来る演奏だったと思う。彼らの奏でる音色に乗せて歌うのはとても気持ちのいいものだった。このバンドのボーカルを少し羨ましくなるほどに。

「ふぃーまぁこんなもんか。初めてにしてはまぁまぁじゃないか? それにしても水野やっぱお前はすげー奴だよ。まさかここまで出来るとは思わなかった。うちのボーカルと引けを取らねーんじゃないか? ははっ」

 荒木は曲が終わるとすぐに感想を口にした。この演奏でまぁまぁと言った荒木達。この人たちは紛れもない天才なのだろうと実感した。僕は着いていくのがやっとだったのが正直な所だ。彼らの演奏に乗せられて歌いきった感じだった。彼らの完璧とはどれほどのものなんだろう。本番はどれだけ気持ちがいいんだろう。そんないろいろな気持ちが頭の中を駆け巡った。

「ねぇ荒木、清水、工藤。キミ達とこうして一時的でもバンドを組めたこと、誇りに思うよ。僕なんかじゃ足でまといかもしれないけど、文化祭までよろしく」

 僕は彼らに対し正直な気持ちを口にした。

「なーに言ってんだよ。水野、お前も十分すげーよ。まさか初めてでここまで出来るとは思わなかったよ。こっちこそよろしく頼むわ」

 荒木は僕に対してそう言ってきた。それから少し曲の話をして今日はお開きとなった。

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