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突然の来訪者

 夏休みもあっとうい間に過ぎ、二学期が始まった。夏休み中は殆ど家でごろごろしているだけで終わってしまった。まぁ何度かは皐月さんと遊んでとは言っても家に行って一緒にごろごろしていただけだったんだけど……

 今日からは今月末に行われる文化祭の準備で、クラスの準備と生徒会の準備とで忙しくなるだろう。

「水野―おーい」

 そんな事を考えながら、授業を受けるために自分の教室へ向かって歩いていると隣から声を掛けられた。

「どーしたの? うーん誰だっけ? キミ」

 声を掛けられた奴に全く見覚えがなくて、素直にそんな事を口にしていた。

「誰って相変わらずな奴だな。一度は自己紹介してるんだけどな。俺は荒木。荒木誠(あらきまこと)、よろしく」

 本当に全く聞いたことのない名前だった。何か悪いことでもしたっけかなぁと思いながら荒木って奴に訊いてみた。

「ところで、荒木? 僕に何か用なの?」

 さっき聞いたばかりの名前なのにも関わらず、疑問形で訊いているのは僕の悪い癖だ。

「あー頼みがあってだな。文化祭の件で」

 荒木という奴は少し言いにくそうに、僕に言ってきた。

「頼み? なら断るよ、僕はクラスの準備と、生徒会の準備で忙しんだよ」

 そう言いながら僕は踵を返して生徒会室へ向かって歩きだした。

「ちょ、待ってくれって。そんな邪険にしないでくれよ。水野にとっても悪いことはないから……なっ? ちょっとでいいから時間くれない?」

 荒木はそう言いながら半分強制的に、僕の腕を引っ張って空いている教室へと連れてかれた。

「はぁ……そんなに引っ張んなくてもついて行くよ、もう」

 僕は諦めて、荒木の言う通りにした。

「あのさ、ボーカルやってくれないか? バンドの。文化祭の時だけでいいんだ。俺たちのバンドのボーカル、うちの学校の生徒じゃなくてさ」

 荒木はそんな事を急に言い出した。僕は始め何を言ってるのか全く理解できず、ポカンとしていた。

「えっ、ちょっと待ってよ。なんで僕がそんな事しなきゃなんないんだよ。第一なんで僕にそんな事頼んでくるんだよ」

 僕と荒木は殆んど面識もなかったのに、どうしてそんな事を僕に言ってきたのか分からなかった。

「えっ? だって水野は人気があるでしょ? それにいい声してるし、絶対ボーカル向きだなって思ってさ。忙しいのは分かるけどさ、頼むよ。歌いたい歌は水野が決めてくれても構わないからさ。何なら作詞してくれても構わないよ。曲は俺たちで作るからさ」

 条件はかなり緩くしているようだがいまいち乗り気はしなかった。でもよくよく考えてみると作詞を僕がしていいと言う事は、皐月さんへの気持ちを歌にしても良いという事だ。ちょっとしたサプライにもなるかも知れない。

「分かった。引き受けるよ。でも作詞させてね。どんな歌詞でも良いよね? 素人なんだからさ。頑張ってキミたちが曲にしてくれ。その条件なら引き受けてもいいよ」

 僕は一方的な条件を出して、断られたら断られたで構わないような気持ちで荒木にそう言った。

「仕方のない奴だな……まぁキミの性格の事は聞いていたから、これも予想の範囲内だったんだが……分かった。その条件でお願いする事にするよ。でも早めに詞をつくってくれよ? 作曲の時間と練習の時間もあるんだからな」

 荒木はそう言って僕の前から去っていった。

「さて、さっそく作詞でもしよーかな、でもどこでやろうか。まぁいっか生徒会室でどーせ仕事なんてないんだし」

 僕はそう言いながら生徒会室へと向かい歩きだした。

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