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『過去』よりも『未来』

――――――


 昨日皐月さんは一時的に調子を崩しただけだと聞いていたが、心配で次の日僕は朝早く登校してすぐに皐月さんの教室へと走っていた。案の定と言うべきか勢い余って扉に激突してしまった。

「痛い……」

 まだ登校するには早い時間だったおかげか、教室には誰もいなかったようだ。

「痛いけど……皐月さん……探さないと……」

 学校に来ているかも分からない人を探すなんてかなり可笑しな事をしていると思うけど、皐月さんに逢う為には学校で捕まえるか、直接家に行くしかないので仕方が無いと言えば仕方が無い。

「あれっ瑠衣? こんなに朝早くどーしたの?」

 僕が頭を押さえながら立ち上がると、すぐ近くから皐月さんの声が聞こえた。

「あっ逢えましたぁー皐月さぁーん。痛かったですよー」

 僕は皐月さんに抱きつきながらそう言った。

「痛かったのか、逢いたかったのかどっちかにしてよね」

 皐月さんは少しおどけたように僕に言葉を返した。

「うー皐月さんのイジワル……」

 僕が項垂れながらそう言うと、皐月さんはそっと僕の頭を撫でてくれた。

「昨日はありがとう。私を保健室に運んでくれただけでなく、仕事まで終わらせてくれて」

 皐月さんは声を掛けながらまだ撫でてくれていた。

「当たり前じゃないですか? 僕を誰だと思ってるんですか。皐月さんの彼氏ですよ? そんなのお安い御用です」

 僕は皐月さんが本当に申し訳なさそうに言ってきたので、僕は文字通り首を傾げながら皐月さんに言った。

「うふふ……ありがとう瑠衣。そうだね私の彼氏だものね……甘えてもいいんだよね?」

 皐月さんはそう言うと、逆に僕の方に体重を預けてきた。

「皐月さん実は甘えん坊さんだったりします? それならそー早く言ってください。僕……甘えるのも好きですけど、甘えられるのも好きだった気がします」

 今、一瞬だけ皐月さんではない女の子が、とは言っても子供が僕に甘えている光景が見えた。

 もしかしたらこれも僕が忘れている過去の記憶の一部だったのかも知れない。

「気がしますって何でそんな曖昧なのよ。別に記憶が無いって訳でもないでしょうに」

 僕も何気なく言った訳だったがこれは良い機会かも知れないと思い、皐月さんに話す事にした。

「そーですね……皐月さん驚かないで聞いてくださいね。実は記憶が無いんですよ。まぁ無いって言ったら大げさですけど、子供の頃の記憶が一部なんですけど無いんですよ」

 皐月さんは僕の言葉に驚いたようで目を丸くしている。

「言ってなくてごめんなさい。実際、記憶がどうこう言うのは僕には関係無いと思うんです。だって過去には戻れないですし、僕にとっては皐月さんとの未来の方が大事ですから」

 皐月さんは徐々に驚いた顔から嬉しそうな顔へ変わっていった。

「確かにそうね。過去より未来か……瑠衣らしいかも」

 皐月さんは微笑みながら僕に言った。

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