意味深な笑顔
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あの後は特に会議とかする事もなく、文芸部の部室で話をして終わった。あの日から数日が過ぎ、正式に楓ちゃんが生徒会役員になった。そして今日は楓ちゃんを交えての初めての会議になった。
「それでは橘さんも席に着いてもらって所で会議を始めましょうか……ところで瑠衣。キミはそんな所で何をやってるのかしら?」
僕はというと皐月さんの肩に頭を乗せながら目を瞑っていた。
「皐月さんの温もりを感じているんですよーダメなんですかぁー皐月さぁん?」
僕は皐月さんにくっつき精一杯甘えた声を出して皐月さんの肩にくっついていた。
「これでわかっただろ? 俺がフウを呼んだ理由が。これじゃ俺ぼっちだし……」
ユウは呆れたように楓ちゃんに向かって言った。
「確かに分かったけど……ユウちゃんがぼっちなのはいつもの事でしょう。ルイに良くしてもらってるんだから少しは我慢しなさいよ」
楓ちゃんがそう言うと場の空気は一瞬にして変わってしまった。しばらく沈黙が続いた後、能登先生が急に笑い出した。
「はっはっは、気に入ったぞ橘君。話には聞いていたがここまでの奴だったとは、剣持君を使ってキミを生徒会に呼んだのは正解だったな……」
僕達は能登先生の話を聞きながら口を開けて固まっていた。
「さぁさぁ会議を始めようじゃないか皐月君。ほら早く早く」
能登先生は言いたい事だけ言うとさっさと自分の席に戻り煙草に火を着けた。
「……そうですね。さぁ始めましょうか。瑠衣、自分の席に戻って」
皐月さんは僕をそっと押して自分の席に戻るように言った。僕は渋々皐月さんの言う事を聞いて自分の席に戻った。
「さぁ今回の議題なのだけど八月の頭に花火大会を行う予定になっています。しかし、今回は殆んど業者の方にお任せする形になっているので、私達が行う事は会場の確保と事務的な仕事だけです」
そう言った皐月さんは生徒会長モードに切り替わっていた。
「皐月さん僕と二人で事務的な仕事をしましょうよ。ユウと楓ちゃんに場所の確保を任せて」
僕は皐月さんの説明が終わるとすぐに僕がやりたいように方向性を持っていった。
「そうねーそのような役割分担にしてもいいかしら、お二人さん?」
僕の提案を受けいれたようで、すぐに二人に確認をとった。
「構いませんよ」「了解ですー」
二人は同時に皐月さんに返事を返した。その様子を見て能登先生は薄ら笑いを浮かべていた。
「さて……早速で悪いけど、取り掛かってもらえるかしら? 一応場所が確保できそうな所はリストにしておいたから、これ以外にも良いところはあるのだけれど予算の都合上、このリストの中にある場所で考えてもらえると助かるわ」
そう言うと皐月さんはユウにリストの書いてある紙を渡した。
「了解しました。でも会長。もっと安くて良い場所があったらそっちでも構いませんよね?」
ユウはいつになく真剣な目で皐月さんに訊いた。
「え、えぇ、それは構わないですけど、当てはあるのかしら?」
皐月さんもユウのいつもとは違う雰囲気を感じ取ったのか、少し不思議そうに答えた。
「まぁそれは結果が出てからのお楽しみって事にして下さい。必ず吉報を届けますから」
ユウはそう言うとそそくさと楓ちゃんを連れて生徒会室を出て行った。
 




