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生まれて初めてのデート

――――――


 そしてようやく待ちに待った日曜日がやってきた。皐月先輩と過ごしてきた、当たり前のような日々、ほとんどが生徒会での作業だったけどそこで見てきた皐月先輩の何気ない仕草、言葉。その一つ一つがかけがえのない想い出になっていた。これがこの想いが『恋』なのかはまだ分からないけど、今日のデートによって分かるかもしれないそんな淡い期待をしていた……

「ふぅ……皐月先輩まだいなよなぁー思ったよりも早く着きそうだし……」

 僕は独り言を言いながら、待ち合わせの場所に指定した桜ヶ丘駅へ向かっていた。ふと時計を見ると九時半前を指していた。待ち合わせ時間までは三十分以上あった。

「やばっ……もう着いちゃうよ……自分が思っている以上に楽しみにしているんだなぁ皐月先輩とのデート。柄にもなく緊張しちゃってるし……」

 そんな事を言っていると、とうとう桜ヶ丘駅に着いてしまった。まだいるはずがないと思いながらも僕の視線は皐月先輩を探していた。すると視線の先には既に皐月先輩が僕の事を待っていた。二度三度、時計と皐月先輩を交互に見ながら間違いではないことを確認して、皐月先輩だという事を認識した。

「さ~つ~きせんぱぁ~い~どうしてこんなに早くいるんですかぁ? 僕が時間間違えたのかと思いましたよぉ」

 僕がいつもよりも甘えた声を出しながら皐月先輩に近づいて行くと、皐月先輩は驚いた表情をしてその場に立ち尽くしていた。

「ど、どうした水野君。待ち合わせの時間はまだ先だぞ。どうしてここにいる? 私はだな、楽しみだから早く来たというわけではないのだぞ? 勘違いするんじゃないからな?」

 初めて見る皐月先輩の慌てる表情。それが見れただけでもこのデートに来て良かったって心から思えた。そんないつもとは違う皐月先輩を見てさっきまでの緊張が嘘のようになくなっていた。

「皐月先輩言ってることが無茶苦茶ですよ。それに言葉遣いもなんか変ですし……」

 皐月先輩の慌てようを見ていつも以上に冷静に言葉を返した。

「そ、そんな事はないぞ? いつもと同じだ。君の方こそ楽しみで眠れなかったのではないか?」

 皐月先輩はあくまで平静を装って僕に訊いてきた。でも全く平静を装えていなかったのははっきりと分かったのだが……先輩としての威厳もあるだろう。僕はそっとしておいてあげた。

「そうなんですよぉ~皐月先輩に早く逢いたくって、予定よりも早く出てきちゃったんすよ~僕の事理解してますねー嬉しいです」

 僕は逆に皐月先輩の言葉を逆手に取ってからかってみた。すると皐月先輩は、そっぽを向いて

「ふ~ん、そうなんだぁ」

って言った。今まで聞いたことのない皐月先輩の年相応の言葉遣いに感動して僕もいつも以上に学生らしいい言葉遣いで返した。

「皐月さんも普通に話せるんじゃないですか。こっちの方が僕は好きですよ? いつもの言葉遣いよりもずっと」

 『皐月先輩』っていうよりももっとフランクに『皐月さん』って呼んでみた。先輩が嫌な気分になってしまうかもとヒヤヒヤしてたけどいらない心配だったようだ。

「水野君……それじゃ私も普通に話すことにするね。ついでにキミのことも瑠衣って呼ぶけど良いよね?」

 この変わりように僕は目の前にいる人が本当に皐月さんなのかどうか一瞬分からなくなるほどのかなりの衝撃を覚えた。まるで、夢で見たあの少女のように無邪気な笑顔だった。それが僕の表情に現れていたのか皐月さんは不思議そうな顔をしていた。

「皐月さんはもしかして、あの時の……いえ、なんでもないです」

 僕は一瞬あの夢に出てきた少女が皐月さんなのか訊いてみようとしたけど、あくまであれは『夢』の中の出来事でしかない。実際に起こったことではいのだから。そう自分に言い聞かせた。

「うん? どうかした瑠衣?」

 皐月さんは僕の顔を覗き込みながら聞いてきた。

「いえ、本当になんでもないんです……それよりも早く行きましょうよ。沢山の動物が僕達を待っていますよ?」

 僕はそう言いながら皐月さんの手を引きながら動物園へと向かって走り出した。

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