予想だにしないサプライズ
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僕が皐月先輩の家にお邪魔してから二日がたった。今日は金曜日になっていた。結局あの日は皐月先輩に怒られただけで時間が過ぎていってしまったせいで日曜日のデートの件を話す時間はなかった。今日もし皐月先輩が学校に来なかったらと心配をしていたが、それは杞憂に終わった。
「水野君ちょっといいかしら?」
僕が学校に向かおうと家から出るとそこには何故か、皐月先輩が立っていた。なんで僕の家を知っているのは疑問に思ったけどそんな事よりも朝から皐月先輩に逢えた事にかなりの感動を覚えていた。
「どーしたんですかぁ皐月先輩、朝早くしかも僕の家の前にいるなんて」
僕は素直に驚きながらも皐月先輩が待っていてくれた事でテンションが上がっていたので甘えた声を出しながら皐月先輩に近付いていった。
「ごめんなさいね。風邪が長引いちゃって日曜日の話をまだしていなかった事を思い出したの。だから朝からお邪魔させてもらったの。一緒に行ってもいいかしら?」!
皐月先輩からの思ってもいなかったサプライズに僕はとても幸せな気持ちになっていた。
表情にも表れていたのか心なしか皐月先輩も微笑んでくれたように見えた。
「いいですよ、皐月先輩。実は皐月先輩と一緒に登校するの憧れたんですよぉーこんなに早く実現するなんて思ってもいませんでした」
僕がそんな事を言うと皐月先輩は少し不思議そうな顔で僕の方に視線を向けた。
「私なんかと一緒に登校なんてしたかったの? 可笑しな子ね。私なんかといても面白くないでしょうに」
皐月先輩は不思議そうな表情から少し翳りのある表情に変わった。皐月先輩の寂しそうな表情を見たくなかった。
「皐月先輩はもっと自分に自信をもって下さいよ。僕が保証します。皐月先輩は素敵な女性なんですから」
僕は普段なら決して言わないような言葉を口にして少しだけ歩くスピードを早めた。そうでもしないと恥ずかしくて仕方がなかった。皐月先輩はまた不思議そうな顔をしてから、僕に微笑みかけてくれた。ただそれだけなのに僕の心はとても幸せな気分になったんだ。
「ところで水野君。日曜日はどうすることにしたの?」
皐月先輩は本来の目的である日曜日の『デート』の件の話を振ってきた。
「そ、それなんですけどぉ……動物園なんてどうですか? 十時に駅前で待ち合わせって感じで、自分なりによく考えた結果なんですけど」
皐月先輩の方からを切り替えてくれた事もあり、自分から話を振る以上に緊張してしまっているのが自分でも分かった。
「えぇ、構わないわ。でも、動物園だなんて思ってもいなかったわ。普通なら遊園地辺りを選ぶんじゃないかって思っていたのに……」
皐月先輩は心底不思議そうな顔をしながらも、さっきよりも表情が柔らかくなっていた。その表情を見て、動物園を選んで良かったとのと、改めてユウに感謝の気持ちを感じた。
「実は……僕の知り合いから勧められたんです。皐月先輩に喜んでもらいたくて、僕デートするなんて言われたの生まれて初めてのことだったので」
僕は少し目を伏せながら皐月先輩に動物園になった理由を話した。
「ふふっ、そうだったの。それは悪いことをしたわね……水野君みたいに可愛い子なら何度もデートをしていると思っていたのだけれど、変なプレッシャーかけちゃったわね」
皐月先輩は本当に申し訳なさそうに僕に頭を下げてきた。その姿を見て僕もすぐに頭を下げていた。二人して道路のど真ん中でしかも登校中に頭を下げてる何て周りから見たら可笑しな人たちにしか見えなかっただろう。そんな簡単な事に気付いたのはしばらくしてだったのだが、その時僕らが二人で笑い合っていたのは言うまでもない……
 




