六章 異界の少女と人間との夜
「じゃあ、どうしよっか?」
長が去った後、遊馬はサミに尋ねた。
ハズもさくらも自室に戻り、今では二人のみ。現在、ベットと敷布団が敷いてあった。
「……」
「ぼ、僕は何もしないよ!」
「……何が?」
「ぅえ!? い、いや、それはな、何でもない!」
遊馬が何故か一人で慌て、頬を紅に染める。サミは気にせず、ベットに座った。
「と、ともかく、どっちか敷布団……になるから……」
チクタクという時計の擬音が似合う静けさの中、遊馬は小さくうなった。そんな遊馬を横目に見て、軽く身震いをした。少し、冷えてきたのだ。
「僕、敷布団で寝るよ。やっぱ女の子だし」
「……いい。あたしが布団で寝る」
「え? いいって。遠慮しなくても」
「遠慮じゃない。そっちの方がゆっくり寝れる」
「あ、そうなんだ。じゃあ、お言葉に甘えさせてもらおうかな?」
遊馬がにっこりと笑った。綺麗と言っていいほど美しい笑顔にサミは視線を逸らしうつむく。その頬が少し桃色に染まっていた。
しばらく沈黙が続いた刹那、遊馬が急にしゃがみこみ、咳き込んだ。
「!」
サミは驚き、ベットから飛び降りるように遊馬に近づき、そこでおろおろと慌てる。「ごほごほっ」という遊馬の咳き込む声が、サミをますます不安にさせた。
「だ、げほげほっ。だ、大丈夫だから」
弱弱しく言うと、また咳き込み、喉からヒューヒューと喉に風の通る音がする。サミは急いで、遊馬の背中をさすった。しかし、咳は止まらず、咳と共に遊馬の口から唾が飛ぶ。
サミはそんな遊馬に声を掛ける事ができず、黙って遊馬の背中をさする。外見、冷静にしてるように無表情だが、内心、焦っている。無力の自分が悔しくてたまらないほどだ。
「はあ……ありがとう」
しばらくさすっていると、遊馬の咳は止まり、弱く礼を言った。サミは、遊馬の背中からそっと手を離し、遊馬を引っ張りあげる。その姿に遊馬は立ち上がりながらも苦笑した。
「大丈夫?」
「あ、うん。いつもの事だからね」
「いつものこと?」
「まあ、体が弱いから」
遊馬はまだ本調子ではないが、笑ってサミに言った。サミは遊馬を見上げ、眉に皺を寄せた。
「もう寝た方がいい」
「じゃあ、そうしよっかな。おやすみ」
「おやすみ」
遊馬をベットに座らせる。遊馬は苦笑したまま、布団に潜り瞳を閉じた。サミはそれを見届け、自分も敷布団の布団に遊馬から背を向けるように寝そべった。そして瞳を閉じる。
「死にたい理由……」
遊馬の言葉を思い出し、“死”という単語が駆け巡る。
サミは、声に出さずに呟いた。
――なんとなく、あんたの死にたい理由がわかった気がする。
段々更新数が減っていてすみません。。。
次回も頑張ります!
次回はついに学校ということで!え?いつ、戦闘シーンか?いつでしょう……