五章 異界の少女とニンゲン界を知り尽くした異界人
しわがれた声に振り向くと、小柄の年寄りが部屋の前に立っていた。この年寄りは遊馬も、さくらも知っていた。
「校長!」
「え? お、長!」
サミが驚いて、声をあげる。ハズも目を丸くした。それに続いて、遊馬もさくらも知り合いなの? と目を丸くする。
「サミ、ハズ。お久しぶりじゃのう」
「は、はい、長! 久しぶりです。元気でいらっしゃいましたか」
「長、なにゆえここに?」
ハズが質問すると、長と呼ばれた校長は皺が寄った目を細めた。
「そうじゃのう。わしは、異界から人間界に来て、現在この学校の校長をやっておる」
「「コウチョウ?」」
「異界から来てって、校長って異界の人だったんですか!?」
サミとハズは首をかしげ、遊馬は驚き、さくらは声を裏返して言った。
「いっぺんに来るとは。いやはや、質問に答えるのはめんどくさい」
「「ええええっ」」
「しかし、孫のようなサミの質問はいくらでも答えよう!」
「それ、ひいきですよ! 長!」
「ありがたき幸せです。長」
校長は満足そうに頷いた。
サミがぺこんと頭を下げる。そして、顔を上げ、にこりと営業スマイルのように笑った。
「それでは、失礼ながら、質問させて頂きます」
「うむ。何でも、来い!」
「あの、あたし達は、何故ここにたどり着いたのでしょう?」
「ふむ。それは、わしが計ったからじゃ」
「計った?」
「うむ。わしが、少しでも長く孫のように愛したサミと多くいるためじゃ。まあ、ハズは、サミのために一緒にしただけのおまけじゃ」
「お、おまけって」
「ちなみに、伊藤遊馬と下条さくらにであったのは、単なる偶然じゃ。まあ、これも、何かの縁じゃな」
校長が「フォッフォッフォッ」と高らかに笑った。
「あの、長。それで、あたし達はどうすればいいのですか?」
「何を今更。もちろん、ここで生活じゃ!」
「ええっ! でも、俺らここの事何にも知らないよ!」
「うるさい! いいんじゃ。学校の手配はわしがする。後は、部屋割りなんじゃが……ちょうど足りんのじゃ……。よし、伊藤遊馬はサミと。ハズは下条さくらと共に暮らせ」
「「「ええええええええっ」」」
校長が満足そうに頷くと、サミ以外は悲鳴を上げた。
「ちょっと、待ってください! 校長! いくらなんでも、僕とサミは男女です!」
「それが何か?」
「ここは、女子は女子同士。男子は男子同士の方がいいんじゃないんですか!」
「いや、それでは、上手く打ち解けられないじゃろう」
「はあ? 俺は、こんな男とは暮らしたくねー! だったら、俺とサミ。下条とあいつでいいだろう!」
「黙りなさい、ハズ」
三人が口々に言うが、それも虚しく終わった。結局三人とも諦める。サミは一人で、その光景を見つめていた。
しばらく、沈黙が続くと、校長は薄い紙を取り出し、サミとハズに渡した。
「これは、この学校で暮らすために必要な事じゃ。絶対に読むように。後、名前はサミとハズではなく、日本の名前にすること。長ではなく、校長と呼ぶこと。サミはある程度、ニンゲン界について知っておるから大丈夫じゃが、ハズ、しっかり勉強するように」
校長はゆっくりと見渡すと、一人で頷き、四人の返事を待たずに部屋を出て行った。
サミ達は、ただ黙るしかなかった。
ふー。テストが終わり、一安心です。。。
話がベタな方向ですみません。