四章 異界の幼なじみと人間界の幼なじみ
「そうね……似ているけど違う」
サミはゆっくりと自分にも言い聞かせるように言った。
「違う?」
「……他人のあんたにそれ以上教える必要ななんか無いわ」
「えっ! でも、ま、待って」
「まだ何か?」
「あ、あの……」
「人探してるの……あんた、まだ死にたくないんでしょ」
サミが溜息をついて言った。遊馬は、驚いてサミの言葉に理解をするのに時間が無かった。
「……えっ。そんな事ない! 僕は――」
遊馬が言いかけると、サミはくすりと口元を緩めて笑った。
「すぐに答えられないのは、まだ悔いがあるって事」
「……」
「それじゃ。こんなにしゃべったのは久しぶり。疲れたし、早く探さないと、日が暮れる」
サミが素っ気無く言うと、扉を開けた。遊馬はとめる術も無く、その場に立ち尽くす。
サミの右足が、部屋から踏み出る。
刹那、ドドドドドドッという騒がしい地を駆ける音がした。
「さみぃ!」
誰かが、飛び出し、サミに飛びついた。サミは、一瞬よろめいたが、何とか足で持ちこたえ、倒れるのを防いだ。
サミに飛びついた正体は、サミと同じくらいの黒いコートを纏った少年だった。
少年はにこにこと満面の笑みでサミに抱きついている。サミは、驚いて、すぐさま少年を無理やり引き剥がした。
「サミ、会いたかったぜ! 我が幼なじみよぉ」
「ハズ、離せ」
ハズと呼ばれた少年は、まだサミに抱きつこうとしている。しかし、サミのどす黒い低い声で、体を凍らせ、抱きつこうとする手を止めた。
「ふえ? サ、サミ、この人誰?」
「な、サミ、こいつは誰だ!」
ハズが遊馬に気付いて、サミと同じような鎌を出し、突きつけた。
「僕は――」
「待って! ハズ!」
遊馬が自己紹介をしようとすると、遊馬の聞きなれた声と同時にツインテールが特徴の少女が入ってきた。
「あ、遊馬? 何でここに?」
「いや、それ、僕の台詞なんだけど。というか、僕の部屋」
遊馬の台詞に、ツインテールの少女がおどけた口調で「あらほんと」と言った。
ツインテールの少女は遊馬の幼なじみであり、クラスメイトの下条さくらである。頭は、悪い方だが、運動神経は抜群で、クラスでナンバー3に並ぶほどの美少女である。
「……ところで、その子は誰?」
さくらがサミに指を指し、遊馬を睨みつけるように言った。
「ああ、サミだよ」
遊馬はさくらの視線に気付かないまま、平然と答える。
「どういう関係?」
さくらは睨みつけたまま言った。サミとハズがじゃれあうのを見て、ますます顔をしかめていく。
「ああ、具合悪そうだったからさ、助けたんだよ」
「えっ? あたしもそうだよ」
遊馬の言葉を聴いて、さくらは目を開く。サミもハズも手を止めた。
「ああ、それなら、ちゃんと訳があるんだよ」
ふと、サミの背後から低いしわがれた声がした。
ふむむむむ……
もうすぐ、市の定着度テストです。。。なぜ、こんなにテストがあるのか、謎です。