二章 人間の少年から見た異界の少女
サミは目を覚ますと、ゆっくりと起き上がった。そして、辺りを見回す。
あたし、どうしたんだっけ?
まだ定まらない思考で考える。
「あ、起きた?」
幼い声がした。先ほどサミが気を失う前の時と同じ声だ。
サミはゆっくりと顔を動かし声の方向へ顔を向けた。視界に映ったのはやはり、気を失う前の時にいた少年だった。
「誰?」
「え? ああ、僕、伊藤遊馬だよ。君は?」
「……ここどこ?」
「うー、ぼくが聞いたんだけど。……ここは僕の高校の寮だよ。ぼくの高校は寮があって、学校まで遠い人はここを借りてるんだ」
「コウコウ?」
「うん。波柴高校。ここらへんじゃ、有名なんだけどなあ」
「……ありがとう」
「ん?」
「たすけてくれたんでしょ? だからありがとう」
「え。あ、うん。全然いいよ。それより、帰る? 送ってくよ。その、ほら、女の子を男の部屋に入れるものなんだし……あ、違うよ! 僕はそんな人じゃないから!」
遊馬は一人で慌てふためいている。顔が真っ赤になっていた。遊馬の言葉はよくサミには理解できなかった。
「で、い、い、い家はどこ?」
「……ない」
「ええ!」
「ない」
「ないって、え、じゃあ君ってホームレス? この歳で!? 僕と同じくらいに見えるのに」
「ホームレス?」
「え、知らないの?」
サミはこくんと頷いて見せた。遊馬の目がますます大きく見開く。
「じゃあ、え、家出?」
「違うけど」
「ふぇ? じゃあ、何?」
「もともとないし」
「もともとないって……僕、意味が分からないんだけど」
「デス・パンプキンだから」
「へ?」
「族の名前」
「日本に、まだ、族なんていたの?」
「サミ=リュードュ」
「え?」
「名前。あんたがさっき聞いたでしょ」
「い、今頃……それに、あんたじゃなくて、遊馬のほうがいいんだけど」
「ユウマ?……ああ、名前か」
「いや、一番最初に言ってるじゃん」
遊馬は拍子抜けしてしまった。あまりのサミのマイペースにはまってしまったのだ。少しの疲れを感じる。遊馬は一つ溜息をついた。
そして話を本題に戻した。
「デス・パンプキンって何?」
「だから、族」
「いや、そうかもしれないけど……そうじゃなくて」
「異界の者」
「異界?」
サミは遊馬の質問に淡々と答えた。その答えは遊馬を混乱させていく。サミは他人事のように顔を背けた。
「異界、あたしたちの住む所。デス・パンプキンはその中の族」
遊馬は絶句した。まさか、信じてもいない現実にはありえないものが目の前にいるのだから無理も無いだろう。まるで信じられない。しかし、サミが嘘をついているようにも見えなかった。
そして、次の言葉はもっと信じられない言葉だった。
「デス・パンプキンは、“人間の魂を狩る”族よ」
やっとテストが終わりました。ひと段落……と言いたい所ですが、また約三週間後にはテストなんですよね……
それはさておき、サミと遊馬の会話です。サミをマイペースな子の設定で行きたかったんですが……サミはなれているのでしょうか? 笑